浅沼宏和ブログ

2021.03.04更新

新しい時代に合わせたドラッカー・マネジメントのコンセプト「ハイブリッドワークライフ」について商業出版が決まりました。6月までに原稿を取りまとめ、7~8月に店頭に並ぶ予定です。

当社では、すでに「ハイブリッドワークライフ」の商標登録(登録第6351295号)を取得しており、今後、このコンセプトについて積極的に社会に発信しておく所存です。

ハイブリッドワークライフについては書籍出版以外にも、研修やセミナー、各種のイベントなどを通じてご紹介してまいります。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2021.03.03更新

目標は組織のすべての人に必要です。社長から新入社員まで全員が明確な目標を持たなければなりません。目標がなければ行動できないからです。各人の目標は、全体の目標、各部門の目標に結び付けて決めなければなりません。

また、他部門や他の人からどんな支援を期待できるかも明らかにしなければなりません。つまり、全体の成果をあげるためのチームワークが大切になるのです。

大組織では各部門がセクト主義や“島国根性”に陥り、互いの仕事を邪魔しあうことがよく起こります。ですから、各人の目標は共通の目標に強く結びつけられて決めなければなりません。

ドラッカーは「マネジメント(経営管理者)」とは組織全体に対してなすべき貢献について責任を負う者と述べています。マネジメントは自部門の目標を設定しなければならないとされています。その目標はそのマネジメントの上司の承認が必要ですが、目標を決めるのはあくまでもマネジメント自身の責任において行わなければなりません。もちろん、目標は自分の好みで決めてよいわけではなく、組織全体の客観的なニーズに基づいて決めなければなりません。

ですから、自部門の目標を決めるため、組織全体の究極の目標を知り、その内容を理解しなければなりません。そこから「自らに何が求められ、それはどのような理由によるのか」「自分のあげた成果はどのような指標で評価されるのか」を知らなければならないのです。そのため、マネジメントはより上位の部門の目標設定に参加するべきだとドラッカーは言っています。

 

 

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2021.03.02更新

組織が成果をあげるには共通の目標が必要です。そして、すべての人の仕事がその共通の目標に向けて行われなければなりません。各人に期待される役割、責任、成果は共通の目標に基づいて決まります。これが大原則です。

ですから、組織人は事業の目標を理解し、それを自分の仕事に関連付けなければなりません。したがって、組織人が成果をあげるとは共通の目標への貢献として行われなければなりません。したがって、成果をあげることと貢献することは同じことになるのです。組織に属していない人の場合には、その目標は社会に置かれることになります。社会に貢献することで成果を最大化するのです。

しかし、組織の人々が仕事のベクトルをすり合わせることはとても難しいのです。なぜなら、それぞれが異なる専門領域で働いていますし、物の見方もそれぞれだからです。行動のベクトルを合わせるには、それぞれが互いの役割を理解し、物の見方をすり合わせなければなりません。組織におけるコミュニケーションの目的はここにあるのです。

ドラッカーはよく「三人の石工」のエピソードを用いて共通の目標の重要性を説明しています。一人目の石工は、生活の糧として働く、二人目は国一番の仕事を目指す、そして三人目は「大聖堂を建てる」ことを目指している。この「大聖堂を建てる」ことが共通の目標というわけです。あらゆる仕事はこの目標に照らして組み立てられるのです。二番目の石工のように一流の仕事をしたとしても、他の人の仕事とベクトルがあっていなければその仕事は無価値なのです。それを「仕事の自己目的化」といいます。

大きな組織では「仕事の自己目的化」がよく起きます。それは、「意味は分からないけれど、やらなければいけないと決まっている仕事」です。そうした組織では間違った物の見方が共有されたまま、疑われることがないのです。この状態では適切なコミュニケーションが成立していません。そのカギを握るのが共通の目標なのです。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2021.02.25更新

ハイブリッドワークライフのコンセプトは最終的に自己目標管理と結びつきます。知識労働では各人の主体性が求められます。各人が適切に目標を設定し、それに基づいて実際に行動し、成果をあげることが重要だからです。

 しかし、こうした主体的な行動をとれるビジネスパーソンは必ずしも多くありません。つまり、ハイブリッドワークライフとは自己目標管理がしっかりとできるビジネスパーソンを増やしていこうという発想なのです。

 ドラッカーは21世紀のマネジメントの最大の課題が知識労働の生産性にあると考えていました。自ら目標を設定し行動する習慣を持ち、継続的に成果をあげ続ける人材が増えなければ社会が存続できないからです。組織は、こうした主体的人材に貢献すべき大きな目標を示す存在なのです。組織は主体的に成果を生み出す人材にとって魅力的な存在でなければなりません。

 SDGsの8番目の目標として、「働きがいも経済成長も」があげられています。ハイブリッドワークは主体的な行動力にあふれ、仕事もプライベートも充実させる人を増やすことを目指しています。それは個人の幸せを追求する一方、その各人の貢献を社会に対する価値提供へと変換する有益な組織を増やす視点でもあります。

 ハイブリッドワークライフは個人のための視点ではありますが、それを支援する組織にとっては主体的な人々の努力を社会的な価値提供に結びつけることで組織としての成果をあげるという考え方も含んでいるのです。そして、それはミッション・ビジョン・バリューを明確化し、実際の組織行動に落とし込むという経営戦略の考え方そのものでもあるのです。 つまり、ハイブリッドワークライフはSDGsとも組織目的の実現とも密接に関係しているのです。 

 当社はISOのコンサルティングを通じて目標設定能力に関するノウハウを蓄積してきました。また、ドラッカーのマネジメント論の著作・通信講座作成・セミナーなどを通じてドラッカーのマネジメント論を整理してきました。こうした経験から大手企業で導入されている目標管理制度の多くが間違ったドラッカー理解であることが明らかになりました。ハイブリッドワークライフでは正しい自己目標管理が重要な柱となります。その中身について、今後、段階的に発表してまいりたいと思います。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2021.02.19更新

幸せになるには成果が必要です。ワークライフバランスという概念の弱さは成果を度外視して私生活の時間を増やそうとする点です。成果をあげられなければ人は幸せになれません。心理学者のアドラーも人は成果によって社会における居場所を作ると言っているのです。

多くの人が、「現代社会では頑張っても報われない。だから、仕事でチャレンジはしたくない。重い責任も負いたくないのでほどほどの処遇で十分だ」と考えるようになっています。

しかし、この考え方にはいくつか問題点があります。まず、この「ほどほどの処遇」とはどれぐらいを想定しているのでしょうか。前に紹介した西尾太氏の「年収基準」という著作では、誰がやっても結果が同じになる仕事の年収上限は300万円とされています。

この認識にズレがないかを確認する必要があります。つまり、「自分は年収300万円で十分だ。だから、責任を負いたくないしチャレンジしたくない」という認識であるかということです。もし、自分にとっての「ほどほど」が年収500万円、600万円であるとしたら、すでに現実とのギャップが生じていることになります。

また、年収300万円までの仕事、つまり「誰がやっても同じ」仕事は、今後AIに奪われていく可能性があります。すると、そうした仕事の奪い合いが生じ、仕事につけなくなる可能性が出てくるということです。

人生100年時代にあっては、80歳近くまで働かなければならなくなる可能性があります。今、20代のビジネスパーソンは、これから60年以上も仕事をしなければならない可能性があるのです。この制約条件を考慮すると、「誰がやっても同じ」仕事に従事する若者は極めて高いリスクに直面しているといえます。

ハイブリッドワークライフではすべてのビジネスパーソンは自らを「個人事業主」と考えるべきだという原則を採用します。個人事業主は「腕前」や「やる気」などに応じて仕事が舞い込みます。「ほどほど」の仕事しかしない事業主に仕事を頼む人は多くありません。常に職務能力の向上を図らなければ、いつ仕事が来なくなるかわからないのです。例え組織に属していたとしても、このような緊張感を持つことが必要です。そうすることで、どこに行っても通用する実力を身につけることができるのです。

個人事業主にはワークライフバランスなどはありません。常に成果能力を引き上げることを考えなければ生き抜くことはできないからです。だからといって、私生活も大切です。しかし、私生活と仕事は分離できるものではなく、「どちらも大事」なのです。それであるならば、仕事自体にも楽しみを見つけ、私生活を通じての成果能力の向上も必要なのです。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2021.02.18更新

人事コンサルタントの西尾太氏の著書・『年収基準』が注目されています。

タイトル名が示すように本書では現在のビジネスパーソンの年収の相場観が示されています。

本書によると従来の日本の人事制度での年収相場観は以下の通り。

・補助・育成クラス(新人):年収240万円~ *成果加算30万円程まで
・自己完遂クラス(メンバー):年収300万円~ *成果加算50万円程まで
・チーフクラス:年収360万円~ *成果加算70万円程まで
・主任クラス(PJリーダー):年収420万円~ *成果加算70万円程まで
・課長クラス:500~700万円 *成果加算100万円程まで
・部長クラス:700~950万円 *成果加算150~250万円
・役員・本部長クラス:950~1200万円 *成果加算200~400万円
・社長・上級役員:1200万円~ *成果加算300万円

といった感じです。

業界差・個別の差はあるでしょうが優良中小企業から上場企業の多くの会社に当てはまっていると思います。零細ではもう少し低めに見る必要があるでしょう。

これに対し、西尾氏はこれからの年収基準として次のように整理しなおしています。

・「誰がやっても同じ結果が出る仕事」:年収250~300万円
・「優秀なプレイヤー」:年収400~500万円
・「マネジメントできる」:年収500~700万円
・「高度なスキルを持つ」:年収800万円以上
・「いそうでいないレベル」:年収1000万円以上 *社長・上級役員を含む

とてもシンプルですが、この基準が示しているのは「自分で考える」要素、「責任を負う」要素を増やさなければ年収は500万円が上限になるということです。特に、「言われたことだけをやればいい」と考えている人は、年収300万円で頭打ちになってしまうということです。ビジネスパーソンはこうしたリスクを押さえておく必要があります。

当社が提起する「ハイブリッドワークライフ」は、人生を豊かにするためにはこの年収300万円のカベ、500万円のカベを突破する必要があるということです。そして、それにはより大きな価値を生み出すことが必須になるということです。「9時から5時まで一生懸命に働けば十分だ」という考え方ではこのカベをなかなか打ち破れないと思います。それは、「サービス残業=持ち帰り仕事を増やす」ということではなく、私生活においても能力開発を心がける必要があるという意味です。

十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動も中長期の成果を最大化するためには不可欠です。旅行や美術・音楽を鑑賞する等の活動も知識を広め、発想の幅を広げるために有益でしょう。すべては成果を生みだすことに結び付けて考える必要があるのです。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2021.02.10更新

 課題が「理想とのギャップ」であるのに対し、問題は「正常とのギャップ」です。つまり、正常であるもの、正しいものがわからなければ問題は見えないのです。

 わかりやすい例で言えば、仕事上の悩みなどは問題です。悩みがない状態が正常なのですから、悩みがあるという状態には問題があるのです。困っていることも同様です。逆に、顧客、上司、同僚などに迷惑をかけていることも問題です。他に迷惑をかけていることは意外に本人は気が付いていないものです。悩みや困りごとに比べると見つけにくいでしょう。

 組織であれば組織全体の方針・計画、自部署の方針・計画などからのズレも問題です。しかし、上位の方針・計画になるほど自分の仕事からは遠く感じるため、問題が生じていることには気づきにくくなります。また、過去の状況と比較することでも問題に気づきやすくなります。

 仕事において問題を発見するには基準や標準との比較が重要です。基準とは「正常の範囲を示す指標」です。標準とは「正しいとされるやり方」のことです。仕事において基準や標準が適切に定められていなければ問題は見つけにくくなります。

 その他、各人が普段から気を付けていることも基準や標準の役割を果たします。例えば、同じ職種の人を集めて、10分から15分ぐらいの時間を与え、「仕事で気を付けていることをできるだけたくさん書きだしてください」とお願いすると、仕事のできる人ほどたくさん書きだせるものです。普段から意識的に気を付けていることが多いのでたくさん書きだせるのです。成果のあがらない人ほど書き出せないものなのです。

 問題とは比較的明確な仕事の目的になります。知識労働者は自ら仕事の目的を設定しなければなりません。問題を見つけることはその必須の能力なのです。しかし、こうした能力は先天的な才能とはあまり関係ありません。仕事を通じて、具体的な基準や標準を身につけていくことで問題発見力が高まるのです。

 自分で問題を見つける力は知識労働者に欠かせない能力なのです。
 

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2021.02.09更新

知識労働者、テクノロジストにとって大事なのは仕事の目的を定義することです。すると、問題や課題といった概念が重要になります。

簡単に言うと、問題とは「正常とのギャップ」のことです。「正しくない」と判断したものが問題になります。「正しくない」ことがわかるためには何が正しいかが決まっていなければなりません。正しいことがわからなければ正しくないものがわからないからです。

これに対し、課題とは「理想とのギャップ」です。「ありたい姿」を思い描き、現状からどう進んでいくかを考えるのです。「ありたい姿」をビジョンということもあります。イノベーションや中長期の経営戦略では課題が何かを明らかにすることが大切になります。

問題解決の基本は狭い意味での問題、つまり「正常とのギャップ」を解決することです。日々の仕事の中で「正しくない」ものを見つけ、解決していくことで問題解決能力が高まっていくのです。日々の仕事の問題解決ができなければ、理想に向かって行動していくことなどできません。

しかし、問題と課題の境界線はあいまいです。本来、「正しいこと」が決まっているはずなのに、それがまだ決まっていなければ、それはある意味では課題なのかもしれません。また、世の中には明確に定義しにくい問題はたくさんあります。そうした複雑な問題は課題に近い難しさがあるのです。

ハイブリッドワークライフでは問題解決能力、課題解決能力が求められるようになります。こうした能力をどのように身につけ、発揮していくかをこれから説明していきたいと思います。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2021.02.08更新

知識労働者というと高学歴者というイメージがあります。いわゆるエッセンシャルワーカーと知識労働者は別物なのでしょうか。

ドラッカーは必ずしもそのようには考えていませんでした。特に「テクノロジスト」、つまり知識労働と肉体労働の両方をこなす人々には非常に広範囲な職業が含まれるのです。

ドラッカーは1920年代のAT&T社の電話工事士、つまり電話機の設置作業者を「テクノロジスト」と考えていたのです。

当時のAT&T社にとって、電話工事士は大きなコストであるとともに顧客の不満の種であったといいます。その原因は、電話工事士の仕事ぶりが顧客ニーズに合っていないことにありました。そこで、電話工事士に顧客ニーズを理解させ、あらゆるクレームを24時間以内に解決するというルールを設けることにしたのです。

次に、電話の架設の仕事と修理の仕事を別の職種にすべきか、それとも一人で両方を担当させるかを電話工事士自身に決めさせました。彼らの答えの多くは、後者の「一人でこなす」というものでした。

そこで、AT&T社は彼らに、電話、交換機、電話網などについての理論的知識を体系的に身につけさせ、どのような問題であっても自分自身で原因究明できるように教育しました。こうして、顧客にはどのような電話機が適しているかを電話工事士たち自身が判断できるようになったのです。こうして、彼らは会社のセールスマンとしての役割も兼ねるようになりました。

さらに、一人で働くスタイルが基本である電話工事士たちに、自分たちの仕事の質を定義させました。彼らを細かく監督できない以上、自己管理してもらうしかなかったからです。そして、その仕事の質が正しいかどうかを苦情件数で判断したのです。

しかし、苦情件数は仕事の質の判断基準としては適切ではありませんでした。そこで、つぎに顧客満足度によって仕事の質を判断するようにしたのです。工事が終わって一週間ほどのちに、電話工事士自身が顧客の所に出向き、「結果に満足しているか」「他にも何かしてほしいことはあるか」といったことを訪ねさせたのです。

こうした取り組みによってAT&T社は電話工事士たちの仕事の生産性を飛躍的に向上させたのです。

AT&T社の取り組みは100年も前の事例です。しかし、テクノロジストが成果をあげるために必要な、①仕事の目的の明確化 ②仕事の質の定義 ③知識労働者としての自覚のすべてが入っています。業務改革以前のAT&T社の電話工事士たちは単なる肉体労働者でした。しかし、三つの視点に基づいた改革によって、彼らは立派なテクノロジストに生まれ変わったのです。

また、彼らのほとんどは小学校卒の学歴しかもっていませんでした。つまり、テクノロジストと学歴とは無関係なのです。知識労働の三つの視点を意識していれば、誰でも知識労働者になれるのです。

この事例はハイブリッドワークライフとは何か、エッセンシャルワーカーにどのように応用するかのヒントを与えてくれるのです。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2021.01.19更新

テレワーク時代の最大の問題点は仕事の自己管理です。テレワークによって生産性が低下したという報告はその難しさを示しています。

テレワークではチームのメンバーが同じ場所にいないことで、空気感が伝わらないことが大きな問題になります。日本の会社では仕事の目的や役割分担が明確でないことが多く、そうしたものが「場」を共有することで暗黙のうちに決まっていく特徴があるからです。

仕事についての明確な指示があるように見える場合でも、具体的な方法や指示の行間のようなものがあいまいだったりするのです。テレワークでは仕事の目的、満たすべき条件、手順などを詳細にすることがより重要になります。考え方としてはプロジェクトマネジメントと同じですね。

しかし、最初から上司、部下、同僚との間で物の見方がそろうことはあまりありません。物の見方のズレは逐次調整していかなければなりません。その際に重要なのはフィードバックです。自分の仕事の適切性はフィードバックされた情報と比較することで明らかになります。目的、成果に関するフィードバック情報を適切に本人に伝達されるような仕組みが必要になります。

目的は何か、何が適切なフィードバック情報なのか、そして実際にどんなフィードバックを行ったか、こうした問いに対する話し合いがコミュニケーションにおける中心的なテーマになっていくのです。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

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