浅沼宏和ブログ

2020.07.27更新

問題と課題はどちらも「解決するべきこと」といった意味の言葉です。この言葉の意味の違いは普段あまり意識されることはありません。しかし、多くの人は無意識にこの言葉の違いを感じ、使い分けているのです。たとえば、得意先からクレームがあった時、どちらの言葉を使うでしょうか。ほとんどの人は、「問題が起きた」と表現するでしょう。「課題が生じた」という人は少ないのではないでしょうか。つまり、多くの人はトラブルが起きた時には「問題」という言葉の方がしっくりすると感じているのです。

では、「課題」はどんな場合に使う言葉でしょうか。例えば、オリンピックなどでの活躍を目指しているスポーツ選手にインタビューをする場合、現在の練習の取り組み状況を聞き、次に「今後の課題は?」と尋ねる場合が多いでしょう。この時に、「問題」という言葉を使う人は少ないと思います。ここで質問されていることは、今抱えているトラブルではなく、自分自身がよりレベルアップするために必要と考えていることは何かということです。つまり、「課題」とはよりよくなることに関係する言葉なのです。このように私たちは、悪い文脈において「問題」という言葉を使い、良い文脈では「課題」という言葉を使っているのです。

多くの場合、「問題」という言葉は正しくない状態を示すために使われます。「正しくないことが起きた」、つまり、正常(あるべき姿)との間にギャップがある場合に使われるのです。そして、「課題」は、「どうすればよりよくなるか」、つまり、理想(ありたい姿)との間のギャップを明らかにする場合に使われるのです。

 「問題」は正常とのギャップですから、本来、そのような状態が起きないようにしなければいけません。つまり、「問題」はゼロにすることが望ましいのです。そのためには仕事の目的・プロセス・手順などを明確にし、そこからズレていないか常に気を配ることが必要です。それが仕事を管理するということなのです。仕事を明確にしておけば「問題」が小さいうちに発見することができます。仕事のできる人は問題が小さいうちに見つけ、即座に対処しているので大きなトラブルになることが少ないのです。逆にトラブルによく見舞われる人は目的や手順があいまいな状態で仕事をしている可能性があります。そして、「課題」は理想とのギャップです。成長するためには「課題」が必要なのです。「課題」がなければ何を目指して行動すればよいかわからないからです。「課題」がないという状態は望ましくありません。「問題」はゼロにすること、「課題」は適切に設定することが大事なのです。

しかし、「テストの問題」という場合の「問題」はトラブルのことではありません。良い意味でも悪い意味でもなく中立的な意味です。言葉の意味は状況によって変化します。「問題」という言葉は「課題」とセットで考えることでトラブルのような意味になるのです。ここで解説した「問題」と「課題」の意味の違いは、仕事や私生活のマネジメントを行う際に使い分けると便利でしょう。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2020.07.08更新

以前、当社では通信講座会社のJTEXのために「ものづくり人のためのドラッカー」という通信講座のテキストを作成しました。

この講座はドラッカーの「テクノロジスト」という概念を現代風にアレンジしたものでした。そのポイントは、現代の多くのビジネスパーソンは、知識労働と肉体労働の両方を行っており、それぞれの生産性を高めていかなくてはならないというものでした。

一般的には知識労働者と肉体労働者は相容れないものとされています。しかし、ドラッカーはそのようには考えませんでした。例えば、外科医の仕事のうち、診察・診断は知識労働です。しかし、ドラッカーは手術を「高度な技能に基づいた肉体労働」だというのです。技術の一つ一つは極めて高度な医学に裏打ちされていますが、手順としては明確に定まっており、それを肉体の動作として行っているので「手術は肉体労働」だというわけです。

一般のビジネスパーソンの場合はどうでしょう。企画書を書くことは知識労働でしょう。新しいアイディアを考え、それをまとめるわけですから単なる作業とは違います。しかし、そのビジネスパーソンも定型的な仕事はたくさん行っているでしょう。書類を作ったり、上司の報告したりといったやるべきことが定まった仕事の方が多いかもしれません。こうしたビジネスパーソンの仕事ぶりを見て、ドラッカーは「テクノロジスト」と呼んだのです。

「テクノロジスト」という響きからエンジニア的な仕事にしか当てはまらないような気がしますが決してそんなことはありません。ビジネスパーソンのほとんどが実際に「テクノロジスト」として働いているのです。

ところで、「テクノロジスト」の二つのタイプの仕事、つまり知識労働と肉体労働では全く働き方が異なってきます。肉体労働は工場労働に代表される働き方です。決まった場所で、決まった時間働くタイプの労働になります。ところが知識労働はそうではありません。知識労働は働いた量に比例して成果が出るわけではありません。素晴らしい企画1本は、ダメな100本の企画に勝るのです。ですから、決まった時間だけ仕事をすればよいというわけにはいかないのです。

今年は新型コロナの影響で在宅での仕事を余儀なくされている人が多くなっています。「テレワーク」や「リモートワーク」が一気に広がったことで、働き方が大きく変わりつつあります。

「ハイブリッドワークライフ」とは、新型コロナ時代における新しいテクノロジストの働き方と私生活の関係を示すコンセプトです。当社では「ハイブリッドワークライフ」のコンセプトをブラッシュアップし、新しい時代の働き方を提示していきたいと考えています。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

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