浅沼宏和ブログ

2020.06.27更新

人は無意識のうちに自分の中にある基準に従って行動しています。基準というのは物の見方のことです。そして、物の見方が変わると行動が変わります。今回は自主性と主体性の違いについて解説したいと思います。

自主性と主体性はどちらも積極的な行動に関する物の見方です。多くの人は、この二つをあまり区別せずに使っていることでしょう。それで不自由を感じることはあまり多くないかもしれません。しかし、この二つは区別したほうが良いのです。これを区別することで行動が変わってくるからです。実は自主性と主体性の違いは目的をだれが決めるかにあります。人が決めた目的に向かって積極的に行動するのが自主性で、自分で決めた目的に向かって積極的に取り組むのが主体性です。主体性の意味を知れば物の見方が変わるでしょう。

 例えば、先生が決めたプログラム通りに勉強や部活動に積極的に取り組む学生には「自主性」があります。それに対し、先生からは何も言われていないけれど、今の自分に何が必要かを考え、目的を設定し、何をするかを自分で決めて実行する学生には「主体性」があるのです。同じ積極的な行動でも、この二つのタイプの行動の意味は全く異なります。そして、現在は自主性よりも主体性がより求められるようになったのです。

あるチームスポーツの全日本のコーチを務めている方に伺ったのですが、今、世界のトップレベルの試合では、相手の戦術をつぶすことから試合が始まるのだそうです。つまり、試合の序盤でお互いに計画通りの行動がとれない状況になるのです。ですから、選手たちには自分で考えて行動することが求められます。ところが、これまでコーチの言う通りに行動してきた真面目で素直な選手ほど何もできなくなるそうです。普段から自分で考えて行動する訓練をしていないためです。

同じことはビジネスシーンでも起きています。現代のビジネスにはさまざまな要素が関係してくるため、当初の予定通りに物事が進むことが少なくなっています。やはり自分で考え、行動することが求められているのです。ところで、現代社会を表すVUCA(ブーカ)というコンセプトがあります。変動(Vulnerability)、不確実(Uncertainty)、複雑(Complexity)、あいまい(Ambiguity)の四つの頭文字を表しています。VUCAの時代には何が正しいのかは誰にもわかりません。だからこそ、他人任せで物事を決めるのではなく自分自身で決めることが重要になるのです。自主性ではなく、主体性が求められるのです。

残念ながら日本の教育では主体性はあまり重んじられてきませんでした。先ほどご紹介したコーチがイタリアに研修に出向いたところ、イタリアのジュニア育成のコーチたちは子供たちが与えられた課題を身につけていないにもかかわらず、どんどん先にプログラムを進めていたそうです。そのことを質問したらイタリアのコーチたちは逆に驚いた様子で、「君たちはコーチの仕事を何だと思っているのだ?子供たちに自分に足りないものを気づかせてあげることではないか。後は本人の問題だ」と答えたそうです。つまり、イタリアでは自主性より主体性を重んじる教育が行われているわけです。日本ではこれまで自主性が重んじられてきましたが、これからは、主体性がより大事になると思います。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2020.06.24更新

リンダ・グラットンの「ライフシフト」がベストセラーとなって以来、「人生100年時代」という言葉が日常用語になりました。

この本のポイントは長寿化のリスクについて指摘したことです。長寿化では、学業の時代、仕事の時代、引退後の時代といった従来までの画一的な3つのステージではなく、個人のライフスタイルに合わせた多様なステージの組み合わせが当たり前になるというものでした。

ところが、多くの人はこの長寿化のリスクに対処しておらず、何らの備えをしないままで年を重ねているといいます。グラットンはこうした時代にあって、自らの生き方を主体的に決定し、行動していくことの大切を指摘したということができます。

ライフシフトの時代において、マルチステージに対応していくためには目に見えない三つの資産が重要になると言います。それが、生産性資産、活力資産、変身資産です。三つの資産はそれぞれ、仕事で成果をあげる能力、肉体的・精神的なコンディション、変化に対応する強みと言い換えることができると思います。

こうしたライフシフトの時代には、「ワークライフ・バランス」という言葉が適切ではなくなってきます。ワークライフ・バランスとは「仕事を充実させるためには私生活を充実させることが大事だ」という考え方です。オンとオフの切り替えのメリハリをつけようということだと言えます。

しかし、ワークライフ・バランスという言葉は肉体労働やマニュアルワークという、いわゆる“9時から5時まで”の仕事を前提とした発想です。この前提は知識労働化した社会には当てはまりません。知識労働は9時から5時までの仕事とは性質が異なるからです。

例えば、仕事上のアイディアが就寝中、入浴中、散歩中などプライベートな時間帯に思い浮かぶことがあると思います。未知の領域になるほどこうした傾向が強まります。知識労働とは、ある意味では24時間労働という性格を持っています。そして、現代社会では大きな付加価値は知識労働で生じるようになったのです。

こうした時代では仕事とプライベートの関係が変化してきます。それが「ハイブリッドワークライフ」というコンセプトです。ハイブリッドワークライフは仕事とプライベートに明確な境界線を設けず、仕事においては楽しみを見つけ、プライベートにおいては能力向上と精神・肉体の活性化を実現するという考え方を表現したものです。

このコンセプトについて、これから詳しくご紹介していきたいと思います

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

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