浅沼宏和ブログ

2017.05.31更新

雑誌WEDGE(2017年5月号)で中西準子氏の「『ゼロリスク』の呪縛から逃れられない日本」という記事が掲載されていました。

築地市場の豊洲移転問題で「環境基準」が大きな問題になっているわけですが、「環境基準を大幅に上回った」と言うばかりで、その環境基準の意味が明らかにされていないのが問題だという趣旨です。
たとえばベンゼンの場合、環境基準は非常に厳しく、毎日2リットルの水を70年間飲み続けた場合、発がんリスクが10万分の1上がるレベルに設定されているそうです。仮に環境基準を100倍上回っても実質的に人体にまったく影響が出ないレベルなのだそうです。

ちなみにシアン(青酸化合物)は1万リットルを一気に飲む場合の致死量、ヒ素の場合はベンゼンと全く同じ基準なのだそうです。
こうした非常に厳しい環境基準は日本人の心配性の気質に合わせて形成されてきたとのことで、科学的にはまったく無影響なレベルの有害物質に過剰に心配するあまり、非現実的なレベルにまで基準が厳しくなってしまったのは問題とのことでした。

リスクマネジメントのポイントはリスクの許容範囲を定めることです。過剰に厳しい基準を設定すると、それをクリアするためのコストは莫大になります。ですから不安解消とコストとのバランスを良く考えた適切な基準設定が求められるわけです。ところがニュースでは「環境基準の100倍」といった説明だけが連呼され、その環境基準がどのような意味を持つかについては一切触れられていないわけです。

私たちは普通に食事をしても残留農薬やら化学物質やらを摂取しているわけですから、「食べ物を扱っているから」という理由だけで過剰な基準を設けるべきではないと思います。
私たちは普段からそこまで厳格なリスク管理をしているわけではありません。豊洲市場の問題にだけ妙に厳しい基準を持ち出すと、本来の目的とは異なる事態が生じるように思います。

環境基準

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2017.05.26更新

品質にしろ環境にしろISOの目標設定は行き詰まりを招きやすいものです。
「数値化」という部分を強調するあまり、枝葉の要素を指標として組み込んで、経営効果があまりないのに「目標を達成しないと」と変なところで頑張るようになったりします。

たとえば環境ISOの認証を取得した企業がやることに行き詰った結果、アイドリングストップとかコピー用紙の裏紙を使うと言った些末な目標を考え付いたりします。
本来やりたいこと、やるべきことが他にあるのに数値化された目標の設定が難しいため、表面上のつじつま合わせに走るわけです。これがISOの形骸化です。

といっても、本来やりたいことの数値化は難しいわけで、解決のためには新たな視点の導入が不可欠です。私は品質基準の在り方を深掘りすることが重要な切り口(環境の場合も本質は同じ)だと考えていますが、その具体的なツールとしては成熟度モデルが有効ではないかと考えるようになっています。

成熟度モデルは米国では国防総省と取引をするための条件になるなどスタンダードな基準になっていますし、内部統制の分野でもIT統制に導入されるなど、デファクトスタンダードともいえるものです。これをISOに取り入れたらと考えたわけです。

と思って調べたら成熟度モデルに基づいてISOコンサルティングを行っている事例もすでにあるようでした。しかし、説明を見る限りでは各企業の個性・特殊性を織り込んだモデルと言うよりはどの会社にも当てはまるような形式を崩せていないような印象を受けました。

ある会社が実現したいことは固有のものですから、そのゴールを明確に定義して、そのゴールに対して成熟度モデルを適用すればいいのではないかと考えています。実現したいことは個別具体的な課題であることが大切で、会社全体のマネジメントレベルの成熟を考えると失敗すると思います。ですから成熟度モデルの適用の在り方は千差万別になるはずです。

成熟度モデルのフレームワークは一見難しそうに見えますが、本質的には理想状態に至るまでを5段階に分けるというだけのことです。それぞれの段階を会社固有の事情に照らして具体的に定義すればそのまま目標にできると思います。成熟度モデルを使ったISOでは、おそらく会社特有の問題点とそれが解決された理想状態の定義に個性がらわれるはずです。また、中小企業の場合には複雑すぎる書式では使いこなせませんので、いかにして口語調のレベルにまで落とし込めるかも重要でしょう。

成熟度モデルは通常の仕事の定義においてもかなり有効性の高い視点なので、日常会話帳のレベルにまで簡略化したモデルができないかと考えています。

 

123

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

  • 各種お問い合わせ
  • 053-473-4111