浅沼宏和ブログ

2017.01.17更新

日経新聞の記事で「競争戦略」についてコンパクトなまとめが書いてありましたので、ご紹介するとともに基本的な考え方を整理したいと思います。

 

日経新聞(1月17日)の西条都夫編集委員の記事の要約

1. 経営者の多くは「事業戦略」「競争戦略」という言葉をあいまいに使っている。売上・利益の目標自体は戦略ではない。

2. 戦略とは「価値ある独自性」の追求のこと。横並びから脱し、他では提供できない価値を顧客に届けることだ。

3. 収益力の源泉となるユニークさを実現する手立てはいろいろある。しかし、最終的な目的地は独自性の確立にある。その実現に向けて青写真を描き、旗を振るのが経営者の役割。

4. 例えばベビー用品大手のピジョンは15%超の高い営業利益率を誇る。同社の原動力は「生後18か月までの赤ちゃん」に的を絞ったことにある。この年齢の赤ちゃんの哺乳に関わるニーズは万国共通。このニーズに対して「いい哺乳器」を開発できれば世界中で通用する。少子化の日本ではなく海外での売上を伸ばしている。

5. ピジョンのように「何をするか」が明確になれば「何をしないか」もはっきりする。ベビー服は哺乳器よりもはるかに市場が大きいが、技術による差別化が難しく、消費者の好みも違うので参入しない方針を選んでいる。

6. ピジョンには最初から明確な戦略があったわけではないが、多くの試行錯誤の結果として現在の戦略が導き出されている。

7. 「工場向けのアマゾン・ドット・コム」の異名のあるミスミ・グループの場合、けた違いに多い取扱品目を用意し、多様な注文に素早く届けるサプライ・チェーンを整えたことで競争優位を築き上げた。本来、利が薄いはずの中間流通と言う業態でありながら10%を超える営業利益率を誇るのは同社の戦略の勝利。

8. あなたの会社に「価値ある独自性」はあるだろうか。

 

記事のタイトルの割には競争戦略の解説があまりありません。競争戦略はマイケル・ポーターの提起した考え方なので、以下にその概要をまとめておきます。

競争戦略とは「業界」において収益性の高い独自性のあるポジションを築き、競争優位を確保することです。

「業界」は地理的範囲、提供価値の類似性の二つの視点で個別・具体的に考える必要があります。

地理的範囲とはターゲット顧客のいる範囲のことです。また、提供価値は製品サービスそのものではなく、顧客の課題に対する解決策の提案のことです。一つの企業が複数の価値提供を行っている場合も良くあります。

業界内での独自性のあるポジションは他社とは異なる活動の組み合わせによって得られます。こうした試行錯誤を通じて活動の調整を行うことを「フィット」と言います。

試行錯誤には軸となる基本方針に対する一貫性が必要です。

また、独自性とは顧客から見て意味のある違いがあることです。その結果としてライバル社と違った価値提案になるわけです。ライバルではなく顧客ニーズに注目することが独自性追求のポイントです。

そして差別化とは独自性があって、しかも高価格(もしくは高い利益)が得られることです。独自性があっても利益が上がらない状態であれば差別化の失敗です。

独自性は差別化の前提という位置づけになります。独自性戦略といわず、差別化戦略という理由は、利益がなければ事業が成功したといえないからです。

 

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2017.01.16更新

昨年のベストセラー『嫌われる勇気』の抄録です。特にビジネスマンに役立ちそうなところを中心にまとめてみました。
アドラーの特徴は、人の行動には必ず「目的」があるという前提に立って、心の在り方を変えるための視点をわかりやすく提示してくれることにあります。
正しい努力の方向性を考えるのに役に立つ物の見方だと思います。

 

『嫌われる勇気』抄録

1. われわれは何かしらの「目的」に沿って生きている。

2. 過去の原因ではなく今の目的を考える。

3. 例えば、「外に出たくない」から「不安」と言う感情を作りだしている。

4. 「怒り」の感情も出し入れ可能な道具。

5. 「トラウマ」の存在は明確に否定する。

6. 経験によって決定されるのではない。経験に与える意味によって決定する。

7. 問題は「なにがあったか」ではなく「どう解釈したか」にある。

8. 変わることの第一歩は知ることにある。

9. 答えは誰かに教えてもらうものではなく自らの手で導き出すもの。

10. 今のあなたが不幸なのは自分自身が「不幸であること」を選んだから。

11. 問題は自分の性格ではなく世界観にあると考える。

12. あなたのライフスタイルを自ら選んだものである。だから再び自分で選び直すことも可能なはず。

13. あなたが変われないのは「変わらない」と決心しているから。

14. 新しいライフスタイルを選ぶと未来が見通せずに不安になる。だから多くの人は色々と不満があっても「このままの私」でいることのほうが楽だし安心と考え「変わらない」ことを選ぶ。

15. 多くの人には「幸せになる勇気」が足りない。

16. 最初にやるべきことは何か。それは「今のライフスタイルをやめる」という決心。

17. 「もし○○だったら」と可能性の中に生きているうちは変われない。変えない人は変えないことで「やればできる」という可能性を残そうと思う。

18. 自分の短所ばかり気になる人は「自分を好きにならないでおこう」と決心している。

19. 実行しなければ可能性の中に生きることができる。

20. 自分の短所ばかり見つめる人は対人関係で傷つくことを過剰に恐れている。「目的」を「他人との関係の中で傷つかないこと」と決めている。

21. 人間の悩みはすべて対人関係の悩みである。

22. 個人だけで完結する悩み、いわゆる“内面の悩み”などというものは存在しない。

23. われわれを苦しめる劣等感は「客観的な事実」ではなく、「主観的な解釈」である。

24. 人は無力な状態から脱したいと願う普遍的な欲求を持っている。*優越性の追求

25. 一歩踏み出す勇気をくじかれ「状況は現実的な努力で変えられる」という事実を受け入れられない人たちがいる。なにもしないうちから「どうせ自分なんて」とあきらめてしまう。彼らは劣等コンプレックスを抱いている。

26. 劣等コンプレックスとは自らの劣等感を言い訳に使い始めた状態。

27. *見かけの因果律 :本来は何の因果関係もないところに、あたかも重大な因果関係があるかのように自らを説明し、納得させてしまう。

28. 「AだからBができない」と言う人は、「Aさえなければ、わたしは有能であり価値があるのだ」と暗示しようとしている。

29. 劣等感を長く持ち続けられる人はいない。だから人は欠如した部分を埋めようと努力する。その勇気がない人は劣等コンプレックスに陥る。

30. 例えば「学歴がないから成功できない」と考える人は「もしも学歴さえ高ければ自分は容易に成功できたのに」と自らの有能さを暗示する。そして「本当の私は優れているのだ」と納得しようとしている。

31. *優越コンプレックス :あたかも自分が優れているかのように振る舞い、偽りの優越感に浸ること。

32. 派手なブランド品を身に付けたり、有名人とのつながりを自慢する人などには優越コンプレックスがあるのかもしれない。

33. 権威の力を借りて自分を大きく見せている人は、他人の価値観に生き、他人の人生を生きている。

34. わざわざ言葉にして自慢している人は、むしろ自分に自信がない。

35. *不幸自慢 :自慢げに病気や不遇な生活を語ること。劣等感を裏返しにして特異な優越感に至るパターン。不幸であることで「特別」であろうとし、不幸という一点において人の上に立とうとする独特なコンプレックス。

36. 健全な劣等感は他人との比較の中ではなく「理想の自分」との比較から生まれる。

37. 今の自分よりも前に進もうとすることに価値がある。

38. 競争や勝ち負けを意識すると必然的に生まれてくるのが劣等感。

39. 社会的成功をおさめながらも幸せを実感できない人が多いのは彼らが競争に生きているから。

40. 相手の言動に本気で腹が立った時には、相手が「権力争い」を挑んできていると考える。相手は勝つことによって自らの力を証明したいと考えている。

41. 怒りはコミュニケーションの一形態だが、怒りという道具に頼る必要はない。

42. われわれには言葉がある。言葉によってコミュニケーションが取れる。言葉の力、論理の力を信じる。

43. 誤りを認めること、謝罪の言葉を述べること、権力争いから降りること、これらはいずれも「負け」ではない。

44. 他人を敵とみなし、仲間と思わない人は「人生のタスク」から逃げている。

45. *人生のタスク :【行動面の目標】 ①自立する ②社会との調和 【心理面の目標】 ①「私には能力がある」との意識 ②「ひとびとは私の仲間である」との意識

46. 仕事の対人関係は最もハードルが低い。成果というわかりやすい共通目標があるため、少しくらい気が合わなくても協力できるし、協力せざるを得ない。

47. 学校や職場のような「場」があれば関係は構築しやすい。

48. 友達や知り合いの数には何の価値もない。考えるべきは関係の距離と深さ。

49. アドラーは相手を束縛することは認めない。相手が幸せそうにしていたら、その姿を素直に祝福できる。それが愛。

50. 束縛とは相手を支配しようとする心の表れであり、不信感に基づく考え。

51. 恋愛関係、夫婦関係には「別れる」という選択肢があるが、親子関係はそうはいかない。親子関係からは逃げられない。

52. Aさんを嫌う場合、あなたには「Aさんのことが嫌いになる」という目的が先にあり、その目的にかなった欠点を後から見つけ出そうとする。それをAさんとの対人関係を回避するために行っている。

53. さまざまな口実を設けて人生のタスクを回避しようとする事態を指して「人生のウソ」という。

54. 目的論の立場に立って自らの人生を、自らのライフスタイルを自分の手で選ぶ。

55. 他人からの承認を求めるべきではない(認めてもらおうと思わない)。

56. 賞罰教育の結果生まれるのは、「ほめてくれなければ適切に行動しない」「罰する人がいなければ不適切な行動もとる」という誤ったライフスタイル。

57. われわれは他人の期待を満たす必要はない。他人からの承認を求め、他人からの評価ばかりを気にしていると、最終的には他人の人生を生きることになる。

58. 他人はあなたの期待を満たすために生きているのではない。

59. われわれは「これは誰の課題なのか?」という視点から自分の課題と他人の課題とを分離していく必要がある。

60. あらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むことで起きる。

61. 誰の課題かを見分ける方法はシンプル。「その選択によってもたらされる結末を最終的に引き受けるのは誰か?」という視点。

62. 自分を変えることができるのは自分しかいない。

63. たとえば「引きこもり」は本人が解決するべき課題で親が介入することではない。ただし、何らかの援助は必要。子供が窮地に陥った時に、素直に親に相談しようと思える信頼関係が築けているかがポイント。

64. 自分にできるのは「自分の信じる最善の道を選ぶこと」。しかし、その選択について他人がどのような評価を下すのかは他人の課題であり自分にはどうにもできない。

65. 例えば、上司がたびたび怒鳴りつけ、がんばりを認めてくれず、まともに話も聞いてくれないと言う人がいる。しかし、上司に気に入られ、認めてもらうことは最優先の仕事ではない。その人は「うまくいかない仕事」の言い訳として『嫌な上司』の存在を必要としている。

66. 課題の分離ができれば上司がどれほど理不尽な怒りをぶつけようと、自分には関係がないとわかる。理不尽な感情は上司が自分の問題として始末するべき課題であるとわかる。すり寄る必要はないし、自分を曲げてまで頭を下げる必要はない。

67. 他人の課題には介入せず、自分の課題には誰ひとりとして介入させなければよい。

68. 課題の分離は対人関係の最終目標ではなく、その入り口。

69. アドラー:「困難に直面することを教えられなかった子供は、あらゆる困難を避けようとするだろう」。

70. 他者の課題に介入しようとすることは自己中心的発想。

71. 自由とは他者から嫌われることである。誰かから嫌われているということは自由を行使していることである。自由にはコストが伴う。

72. 他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを恐れず、承認されないかもしれないというコストを支払わない限り、自分の生き方を貫くことはできない。

73. 幸せになる勇気には「嫌われる勇気」も含まれている。

74. 対人関係のカードは常にわたしが握っている。

 

 アドラー

 

 

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2017.01.13更新

昨年末、日本プロジェクトマネジメント協会第217回例会で行った講演内容の概要を記しておきます。サイバーセキュリティと言わず、あえてサイバーリスクのマネジメントと表現している理由は、通常のマネジメントとの関係性がよりわかりやすくなると考えてのことです。また、サイバーセキュリティという場合、サイバー空間での情報セキュリティという狭い定義になるのを避けるという意味合いもありました。サイバーリスクのマネジメントということで、通常のリスクマネジメントの方法論がそのまま利用できることになります。 

 

「 サイバーリスクのマネジメント ―コンプライアンスとしての安全・安心― 」

1. コンプライアンスとは法令遵守ではなく法令「等」遵守と理解するべき。社会常識を逸脱した企業行動には法的制裁以上に厳しい社会的制裁が待っている。

2. コンプライアンスの対象範囲は広い。「知っていることには責任が生じる」というドラッカーの「野獣の原則」の視点が有効。

3. サイバー攻撃が頻繁にニュースで伝えられ出したのは2011年。つまりそれ以後、サイバーリスクは社会常識化し、コンプライアンスの対象とすべきテーマとなった。

4. サイバーセキュリティはサイバー空間での情報セキュリティと捉えられがち。情報セキュリティとは「情報資産の安全管理」のことであるが、サイバーリスクは更に広い。だからサイバーセキュリティよりサイバーリスクのマネジメントという方が経営管理制度となじみやすいかもしれない。

5. サイバーリスクのマネジメントは「サイバー空間での安全・安心」を目的とするもの。安全は品質の一種、安心は顧客満足の一種なので品質管理の延長上の問題として捉えられる。

6. サイバーリスクを完全になくすことはできない。そこで「サイバー空間での安全運転」という視点が有効。交通事故は防ぎきれないが安全運転が必要であることはサイバーリスクについても言える。

7. リスクマネジメントとは、リスクを識別、評価、対応するという3つのステップで行う。

8. リスクを識別するにはリスクについての知識が必要。サイバー関連記事が基本となる。

9. リスク評価は発生確率と影響度(ダメージ)の2軸で評価する。

10. 評価したリスクは回避、移転、低減、受容の4つの内から対応策を必ず選ぶ。サイバー空間の利用は止められないので回避は不可能。

11. 移転とは保険・外注化等で組織外にリスクを移すこと。現代では情報漏洩保険が整備されてきているので最低限の移転は必要。

12. リスク低減こそリスクマネジメントの本丸。いかに「より安全な運転ができるか」を考え実行する。

13. 受容はリスクとコストのバランスを考えてあえて行動しないこと。単なる「放置」とは全く違う。

14. サイバーリスクを放置するサイバー無策は高くつく。経営リスクの一つとしてマネジメントすることが必要だ。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2017.01.07更新

クリステンセン論文の第四弾です。ここでは顧客ニーズをジョブという切り口で実務に応用しやすい形を提起しています。このジョブはドラッカーが「価値・効用」と呼んだものですが、実務的に言えば「困りごと」「宿題」「もやもやしていること」とでもいうと理解しやすいかもしれません。

また価値提案の明確化はマイケル・ポーターが「トレードオフ」と呼んだ、二者択一の視点として理解できそうです。この論文の実務的有用性は高いと思います。

  

第七章

セグメンテーションという悪弊

―「ジョブ」に焦点を当てたブランド構築が必要―

 

1 毎年新発売される消費財は3万種類に上るというが、その9割以上が失敗している。何かが間違っているはずだ。

2 その原因は、従来の市場細分化手法、ブランド構築手法、顧客を理解する方法が機能しなくなった。つまりマーケティングのパラダイムが崩壊しつつあることにある。

3 セオドア・レビットは「消費者は四分の一インチ径のドリルを買いたいのではない。彼らが欲しいのは四分の一の穴だ」と言った。しかし、マーケターはドリルの種類と価格で市場をセグメントしようとする。肝心の穴ではなく、自社のドリルの特徴や性能をライバルと比較評価しようとする。

4 このようにマーケターは往々にして問題解決を見誤る。顧客ニーズと無関係な方法で商品を改良してしまうのだ。

5 市場構造は顧客の目にはきわめて単純に映っている。顧客は何らかの「ジョブ」を処理する必要があるだけなのだ。簡単に言えば、商品を「雇い」、自分の代わりにそのジョブに当たらせるのだ。

6 マーケターの役割は、顧客の実生活において、自社の商品が雇われる可能性、つまりどのような「ジョブ」が発生するかを理解することに他ならない。

7 マーケターがそのジョブを理解し、それを肩代わりする商品、購入体験や仕様体験を設計し、意図した使用目的を補強する商品を作ることができれば、そのジョブを処理する必要性に気づいた顧客はお金を支払ってもその商品を雇う。

8 分析の基本単位は顧客ではなく「ジョブ」であるべきだ。

9 あるファーストフードチェーンがミルクシェークの分析をしたところ、最も多い購入パターンは早朝1人で来店し、ミルクシェークだけを買って自分の車の中で飲むというものだった。顧客は自動車通勤の退屈さの解決手段として、また10時ぐらいまで腹持ちさせたいというジョブを処理するためにミルクシェークを買っていたのだ。このジョブの分析によって適切な打ち手を考えることができた。

10 顧客のジョブの処理に最もふさわしい商品がまだ存在しないものも多い。こうしたジョブを処理する商品を設計し、しかるべきブランド・ポジショニングを実施すれば新たな成長市場が誕生するだろう。

11 ある企業は重曹の事業について、「口腔内を清潔にし、清涼感を与える」「冷蔵庫内の臭いを消す」「腋の下を清潔、快適に保つ」「カーペットを清潔にし、臭いを消す」「猫の排せつ物の臭いを消す」「衣類に新鮮な香りを与える」というジョブに注目し、事業を多角化させた。

12 特定のジョブを処理する時にまず頭に浮かぶ商品を「目的ブランド」と呼ぶ。「荷物を間違いなく確実にできるだけ速やかに送る」ジョブに対するフェデックスが典型。

13 広告だけでブランド構築はできない。ただし、広告はそのブランドが特定のジョブに適していることを伝えることはできる。必要なジョブが存在し、そのジョブにふさわしい商品が存在することを人々に気付かせることはできる。

14 優れたブランドのほとんどは広告宣伝を始める前にすでに構築されている。ゼロから広告によって消費者が信頼するブランドを構築しようと試みると骨折り損に終わる。

15 強力な目的ブランドの構築に成功したらどう活用すべきか。それには一般原則がある。

16 原則の一つは、同じジョブを処理する別の商品を追加すること。このやり方ならブランド・イメージをあいまいにする心配なく展開できる。

17 もう一つ原則は、目的ブランドを特定のジョブ専門とすること。違う価値を提供する場合には別のブランドをたてる必要がある。もしくは親ブランド化して複数のジョブに対処するために子ブランドをつくる。

18 このようにジョブという切り口に焦点を当てると競合商品と差別化できる。ただし、そこで難しいのは特定のジョブを遂行できると伝える場合、その他のジョブは遂行できないことを伝えることにもなる。

19 しかし、特定のジョブを完璧に処理する目的ブランドになればプレミアム価格が付けられる。そしてセグメンテーションで考えた市場よりも大きな市場で競争できる。

20 自動車メーカーには目的ブランド構築が不十分で差別化ができていない企業が多い。

 

 

 

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2016.12.29更新

クリステンセンの論文集からの第三弾です。

この論文では、いろいろな業界でなぜ分業化が進むのか、なぜそうした業界ではサプライヤーの力が強まる場合があるのかを説明しています。ここからアウトソーシングの基準が導き出されます。

これも顧客ニーズと製品の性能の視点から割り出されていますから、モチーフになっているのは破壊的イノベーションの理論です。なぜ、PC業界の利益がIBMからインテル、マイクロソフトに移ったのかについてのわかりやすい視点を得られます。

 第五章

シフトする収益源を先読みする

―製品ライフサイクルに伴うバリューチェーンの変化―   2002年2月

1 コア・コンピタンス(企業の中核能力)以外のものはすべてアウトソーシングすべきだというかつての主流的経営論には落とし穴がある。

2 魅力的な収益が見込める事業領域はバリューチェーン内を動いていく。その時点の視点でアウトソーシングを行った企業の多くが収益源を失った。この事態は破壊的技術の視点で理解することができる。

3 市場での競争の方法は商品進化の段階ごとに異なる。進化の初期段階では企業は商品の性能で勝負する。そして時がたち、主だった顧客ニーズが満たされると、次は利便性、カスタマイズ性、価格、融通性で競争するようになる。

4 初期段階の商品では顧客ニーズを満たすため、エンジニアは可能な限り高い性能を達成することに集中せざるを得ない。すると自社独自のコンポーネント(部品)を開発し、組み合わせるという方法が取られる。

5 こうした初期段階では垂直統合型企業であることが成功に必須の条件となる。非統合型企業ではそれぞれの企業のシステムを一つのシステムにまとめることが難しいからである。

6 ところが商品性能が向上し、一般的顧客のニーズを上回るようになると状況が一変する。基本的ニーズが満たされた顧客に対し、より柔軟性の高い商品を迅速に市場に投入し、以前よりずっと小さなニッチ市場のニーズに応えるよう商品カスタマイズが必要になる。

7 このように商品が進化した次元では、企業はモジュール方式で商品を設計し、コンポーネント(部品)とサブシステム間のインターフェースをはっきり特定する必要がある。するとインターフェースが最終的に“業界標準”へと収束する。

8 モジュール方式は素早く新商品を市場に投入するのに役立つ。一から十まで設計し直さなくても各サブシステムの改善が可能だからだ。企業は最良のサプライヤーが製造する最も優れたコンポーネントを組み合わせて個々の顧客ニーズに柔軟に応えることができる。

9 標準インターフェースを使えばシステム全体の性能の点では常に妥協せざるを得ない。しかし、商品が十分成熟し、性能を持て余し気味にしている顧客を狙う企業は、性能について多少は譲歩しても、スピードと柔軟性の点でメリットを重視する。

10 業界のプレーヤーがみな従う業界標準が確立されると垂直統合型の企業であることは成功のカギではなくなる。逆に垂直統合型であることはスピード、柔軟性、価格の点で競争上の足かせとなる。そのため業界は分業化へ向かう。

11 するとバリューチェーンの各段階をつなぐインターフェースがポイントになる。このインターフェースは初期段階では企業の垂直統合化を後押しし、最終的には産業をコンポーネント(部品)単位に分業化させる力となる。

12 分業化には3つの要件が必要。①外部調達を成立させる条件を把握する ②条件に合致するかを検証できる ③効果を予想できる(予想外の相互依存性がないこと)

13 顧客が機能性よりスピードや利便性を重視するようになるとゲームの流れが変わり、利益の源泉が移る。その基本原則は「バリューチェーンの中で各段階との相互依存性を高めたところが一番儲かる」である。

14 分業が進んでモジュール方式が一般化した業界では競合企業との差別化が難しい。そこでサプライヤーに圧力をかけて高性能・低コストのコンポーネント開発を急がせる。

15 モジュール方式で商品設計・製造を行っているサプライヤーは顧客企業の要求にこたえようと性能面での強みを極限まで追求する。するとサプライヤーは相互依存性・独自性が高いアーキテクチャを創造せざるを得なくなる。すると顧客企業に対するサプライヤーの立場が強くなる。

16 収益の上がる事業の領域、そうでない領域の違いは何か。利益が集まるのは直接の顧客ニーズにまだ十分に応えていない段階のところである。この段階の企業は顧客ニーズにこたえようと独自のアーキテクチャを生み出すからである。

17 つまり、十分に性能が向上していない領域をアウトソーシングすると、その事業領域で将来的に収益が上がるようになると自社の事業領域の利益が失われる。

18 垂直統合型企業はやり直しのきかないアウトソーシング、事業売却を行うのではなく、柔軟に事業を組み合わせたり、切り離したりするのであれば非統合型企業よりも景気の変動を乗り越えやすい。こうした事例はPC業界によく見られる。

19 自動車業界ではモジュール方式が採用されている。メーカーはトップクラスの少数のサプライヤーからサブシステムを調達する。ブレーキ、ハンドル、シャーシなど各サブシステムのアーキテクチャはメーカーの厳しい要求に応えようとして相互依存性がますます高まっている。つまりメーカーではなくサプライヤーの収益性が高まっている。

20 自動車メーカーはPC業界のデル社のように振る舞う必要がある。徹底的に俊敏、柔軟、そして顧客にとって便利になることである。

21 現在好調な企業の経営者は「大きな利益を生み出す力がどこか別のところにシフトするかもしれない」と考えている場合ではない。「いつ」シフトするかを考えるのだ。

 

その1

その2

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2016.12.28更新

クリステンセンのHBS経営論集の論文の第二弾です。
この論文では破壊的イノベーションを経営資源、プロセス、価値基準という視点で分析し、なぜ業界リーダーが破壊的イノベーションに対応できないかを示し、その処方箋も併せて提示しています。
特に組織についての提言は、落とし穴にはまりがちな組織改革のチェックリストとして重要だと思います。結論自体はドラッカーのイノベーション論とそんなにギャップは感じません。

「クリステンセン経営論」ダイヤモンド社 第三章
イノベーションのジレンマへの挑戦
―リーダー企業は破壊的変化にどう対処すべきか―    2000年9月

1. 大企業のマネジャーは破壊的変化への対応にことごとく失敗してきた。その理由はおそらくマネジャーには組織の能力について注意深く考える習慣がないためだ

2. 同程度に有能な人材グループを別々の組織で働かせても成果に差が出る場合、その原因は組織の能力自体にあると考えられる。組織の能力はメンバーの資質、その他の経営資源とは別物と考えなければならない。

3. 企業を継続的に成功させるには個々の人材を評価するだけではなく、「組織全体で何ができ、何ができないか」という能力を別途に評価する必要がある。

4. 破壊的イノベーションに対応する最悪のアプローチは現行組織を抜本的に変えてしまうことかもしれない。企業を変身させるつもりがそれまで企業を支えていた能力を破壊してしまうこともある。

5. 組織に何ができ、何ができないかを規定するのは、経営資源、プロセス、価値基準の三つの要素である。この三つの視点から組織能力を評価する。

6. 経営資源について。「当社に何ができるか」を自問した時に経営資源に答えを求めることが多い。しかし、経営資源の分析のみでは組織の能力の全容は判断できない。

7. プロセスとは経営資源を商品やサービスという一段高い価値に変容させるための相互作用、調整、コミュニケーション、意思決定のパターンを指す。

8. プロセスの本質は社員が常に業務を一貫した方法で成し遂げられるように設定することにある。これは経営者にとってジレンマにもなる。プロセスは変更することを前提にしていない。もし変更の必要が生じても簡単には変えられない仕組みになっている。

9. ある仕事を成し遂げるためのプロセスはそれ以外の仕事を行うことを不可能にする。そして企業にとって最も重要なプロセスが明確でわかりやすいものであるとは限らない。逆に目につきにくい背後のプロセスが重要であることも多い。

10. 変化に対応する能力について最も深刻な課題は経営資源の配分、企画と予算の調整といった意思決定プロセスに潜んでいる。このプロセスが必ずしも明確ではないことがある。

11. 価値基準とは重要な事や優先すべきことを判断するための基準。企業規模が大きくなるほど、組織全体の社員を教育し、戦略方針やビジネスモデルとの整合性を取りながら、一人一人が重要度を判断できるようにすることが、より大切になる。

12. 組織に一貫性のある明確な価値基準が浸透しているかは企業経営の優劣を測る重要な尺度。

13. 多くの企業が注目する価値基準は収益性と市場規模の二つ。この二つの価値基準がほころびると企業が破壊的変化にうまく対応する能力は徐々に失われる。

14. ①収益性についての価値基準を明確にすることが必要。例えばハイエンド市場を相手にすれば間接費が上がり、従前の粗利益率では不十分になる。トヨタが北米でハイエンド市場に進出するためローエンド市場からの撤退を決めた事例など。

15. ②市場規模についての価値基準はビジネスチャンスに関わる。小企業なら十分な市場も大企業では食い足りないことが多い。企業規模が大きくなると小規模の新興市場に参入する能力を失っていく。この能力喪失は経営資源の変化によるのではなく、むしろ価値基準の変化による。

16. 企業の成長の初期段階では、経営資源、特に人材の影響が大きい。要となる人材が一人二人、組織に加わるか離脱するだけで企業の業績に多大な影響を及ぼすことが多い。しかし、時がたつと組織能力の重心はプロセスと価値基準へとシフトしていく。

17. まず恒常的業務をこなすうちにプロセスが固まってくる。ビジネスモデルがはっきりした形を取り始め、業務の優先順位が明確になる。そして次第に価値基準が形成される。

18. 企業がたった一つの画期的商品の成功によって上場を果たし、その直後に失速するケースが多い。その原因の多くは当初は個々のエンジニアの能力が成果を生むが、継続的に商品を生むプロセス開発に失敗することにある。

19. 次々と人材が入れ替わる大手コンサルティング会社が質の高い仕事を維持している理由は、コア・ケイパビリティ(中核能力)が経営資源にではなく、むしろプロセスと価値基準にあるため。

20. 企業の誕生から成長期にかけてプロセスと価値基準が形成される段階では経営者が与える影響は絶大。社員の仕事の仕方、組織の優先事項について経営者には明確な持論がある。

21. 創業者の判断に誤りがあれば失敗する可能性は高い。しかし、健全な判断がなされれば創業者の問題解決、意思決定の方法が正しいことを社員は目の当たりにし、体得していく。こうしてプロセスができあがっていく。

22. 同様に、創業者の考えを反映した判断基準に従って経営資源が配分され、財務的にも成功すれば、その実績を中心に企業としての価値基準が形成される。

23. 企業が成熟すると社員はこれまで日常的に行い、成功してきたプロセスや判断基準こそが仕事を行う上で最も正しい方法と思い込むようになる。これが組織文化を形成する。

24. 組織文化があれば社員に自律的ながらも一貫した行動をとらせることができる。組織文化が強力な管理ツールになる。

25. このように組織に何ができ、何ができないかを規定するものは時と共に変化する。出発点は経営資源だが、次に目に見え、はっきり表現されたプロセスと価値基準へと重心がシフトする。

26. 経営資源、プロセス、価値基準のどれを経営能力の基盤にしている場合でも、成功企業は市場の持続的変化に対応するのに長けている。この変化を持続的イノベーションという。しかし、企業が問題に突き当たるのは、市場での革新的変化に対応したり、破壊的イノベーションに対応したりする場合である。

27. 持続的イノベーションを開発し、導入するのは、ほぼ決まって業界のリーダー企業である。持続的イノベーションにおいてリーダー企業を打倒することは難しい。

28. 新商品や新サービスで新市場を創造する破壊的イノベーションは頻繁には起こらない。だから、どの企業にもこれに対処するプロセスを持たない。

29. 破壊的イノベーションの利益率は必ずと言ってよいほど低く、魅力的商品ではないため大企業の価値基準とは合致しない。だから業界のリーダー的企業は破壊的イノベーションに事業機会を見出せない。

30. 経営資源、プロセス、価値基準のフレームワークによってリーダー企業が破壊的イノベーションに乗り出さない理由がわかる。つまり業界のリーダー企業は持続的技術を開発し、導入するように組織が出来上がっているということ。

31. リーダー的企業が破壊的変化への適応能力を創造する方法は3つ。①内部に新たな組織構造、プロセスを開発する ②既存組織から独立した組織を作る ③新たな課題にふさわしいプロセスと価値基準を持つ別組織を買収する

32. 残念ながら、ほとんどの企業がオールマイティ型の組織戦略を取る。つまり軽量チームもしくは職能別組織で規模も性質も異なる全ての課題に臨もうとする。しかし、この方式はすでに固まった組織能力を活用するやり方である。

33. 逆に、重量チームを信奉しすぎる企業も多いが、理想的にはそれぞれのプロジェクトに必要とするプロセス、価値基準とを合わせて、チーム構造や社内・社外で行うか等を決めるべきである。

 

適切な組織構造

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2016.12.27更新

クリステンセン論文集の第一章です。「破壊的イノベーション」の基本論文です。優良企業であればあるほど、破壊的イノベーションには対処できなくなるという結論で有名です。また、その理論の応用範囲も想像以上に広く、およそイノベーションを考える人であれば、知っておくべき内容でしょう。

クリステンセン論文集

イノベーションのジレンマ
―大企業が陥る「破壊的技術」の罠―   1995年7月

既存技術と破壊的技術の例―馬車と自動車、真空管と半導体、メインフレームとPC、フィルム写真とデジカメ、デジカメとスマホ・携帯の写真機能、固定電話と携帯電話など

1. ビジネス界では業界大手が技術や市場の変化に対応できずに失敗するパターンが良くみられる。多くの場合、それらの企業は既存顧客の意見に耳を傾け、彼らの要求に積極的に答えようとした結果、後に手痛いダメージを被った。

2. 優良企業には合理的・分析的な意思決定プロセスがある。そのプロセスでは既存市場の顧客ニーズに注いでいる経営資源をよくわからない市場や顧客に振り向けることはできない。

3. 優良企業の多くは、初めのうちは主要顧客のニーズに合致しない新技術をなおざりにすることで後に大きなダメージを受けた。

4. 優良企業に破壊的ダメージを与える技術変化には二つの特徴がある。①新技術の製品性能が当初は低く、既存顧客はこの性能の違いに価値を認めない。 ②この新技術が後に既存顧客も価値を認める性能に達するので既存市場が浸食される。

5. 破壊的技術には主要顧客が価値を認めてきた特性とはまったく異なる特性があり、既存顧客が性能面で重視する点が劣ることが多い。そのため既存顧客のニーズに対応すればするほど破壊的技術をなおざりにせざるを得なくなる。

6. 当初は既存製品に劣り、新市場でしか通用しない技術が、やがて既存市場で業界リーダーを脅かすようになるのはなぜか。一般的に破壊的技術は優良企業にとって経済的魅力に乏しい。一方、新規参入者は高コスト構造ではないため、新市場は十分魅力的。こうした企業は新市場に足がかりを築き、その技術性能が向上させて、高コスト構造の大手企業の縄張りである上位市場を視野に入れるようになる。

7. 優良企業は既存顧客のニーズに合致しない破壊的技術の将来性には注意しなければならない。しかし、この流れを認識することと、状況を打破する方法を見つけることは別物。多くの業界では優良企業が破壊的技術に対処できず同じ失敗を繰り返している。

8. 問題は過去の成功体験をそのまま繰り返すことにある。成功を収めた企業ほど既存顧客が望まない技術や利益率の低い案件に資源を傾けることができない。

9. 破壊的技術が登場した時に優良企業はどう対処すべきか。まずは真の脅威となる破壊的技術を見極めること。ただし既存の重要顧客に意見を求めるのは間違い。破壊的技術の顧客は既存顧客が求めるよりはるか下の性能を求めている。彼らの視点は既存顧客とまったく違う。

10. 重要なのは破壊的技術が初期の低い性能からどの程度の速度で性能向上するかを知る事。それがいつ主力市場で求められる性能に追いつくかを見極める必要がある。

11. 破壊的技術を見極めるには、顧客は誰か、どのような顧客がどのような製品性能を重視するかを想像してみるとよい。

12. 優良企業が新技術を扱うには自社から独立した組織に行わせるべき。破壊的技術の利益率は当初は低く、また新規顧客特有のニーズに応える必要があるため。

13. 新規技術にうまく対応し、新市場で成功を収めても主力事業に統合しない方が良い。破壊的技術は将来的に既存技術を侵食する可能性があり、同一組織でマネジメントするには向かない。

14. 破壊的技術で成功するには、小規模の注文でもやる気になり、その存在すら定かでない市場にコストをかけずに参入し、未開拓市場でも利益が出るように固定費を抑えた組織で戦略的にマネジメントすることが必要。

論文では事例としてHDD業界における著しく短サイクルでの破壊的イノベーションの発生を取り上げています。数年単位で覇権を握る企業が入れ替わる業界は多くはないと思いますが、あらゆる業界において起きうる事態だと考えられます。
この論文集の破壊的イノベーションという視点は非常に応用範囲が広く、後に続く論文もこのモチーフを発展させています。

HDD業界における破壊的イノベーション

 

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2016.06.15更新

今後ともよろしくお願いいたします!

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

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