浅沼宏和ブログ

2017.01.27更新

著者のアル・ライズはジャック・トラウトと共に「ポジショニング」という重要な考え方を広めた人です。ポジショニングを知らなければマーケティングは語れないというほどの影響力がありました。そして本書はポジショニング戦略の解説的内容になっています。自社の価値提案が「落とし穴」にはまらないようなチェックリストと考えるとよいと思います。

アル・ライズ/ローラ・ライズ著『ブランディング22の法則』抄録

1. 拡張の法則:「ブランドの力はその広がりに反比例する」 多くの企業がブランドのコンセプトを頼りにラインを延長させようとして失敗している。顧客はブランドの範囲が狭く、ただ一語で識別できるブランドを望む。ライン延長は短期的には売り上げを伸ばすが、長期的にはブランド力を低下させる。

2. 収縮の法則:「焦点を絞り込む時、ブランドは強力になる」 ブランドを拡張するより収縮させる方が良い結果が生まれやすい。ところが多くの企業はブランドを拡張させようとして失敗している。成功企業は焦点を絞り込んでチャンスをつかんだ。良い結果は焦点を絞る時に生まれる。

3. パブリシティの法則:「ブランドは広告によってではなくパブリシティによって生まれる」 パブリシティとはメディアに好意的に取り上げられること。そのベストな方法は新しいカテゴリーにおける一番手になること。メディアは新しいもの、強烈なものを報じたがるのであり、必ずしも優れたものを報じるわけではない。今日、ブランディングに役立つのはパブリシティであって広告ではない。多くの企業が広告を主要なコミュニケーション手段と考える間違いを犯している。

4. 広告の法則:「いったん誕生したブランドは、その健康を維持するために広告を必要とする」 パブリシティが成功し、もはや新たに語るべきニュースが無くなった時こそ広告の出番。特にリーダー企業は広告予算を投資と考えるのではなく、競合の攻撃から生じる損失を防ぐ保険と考えるとよい。そして広告では自社製品のリーダーシップを強調するべきであり、品質の部分的な一面を強調するべきではない。広告は強力なツールだが、それは生まれたてのブランドがリーダーシップを築くためではなく、確立したリーダーシップを維持するための手段。

5. 言葉の法則:「消費者の頭の中にひとつの言葉を浸透させるようにする」 ブランド構築のために見込み客の頭の中にひとつの言葉を刷りこませるように努力を集中すべき。それは他社が使っていない言葉であること。いったん言葉が浸透すると競合相手がその言葉を奪い取ることはほとんど不可能になる。しかし、刷りこみに成功したブランドがそのベースを広げようとする落とし穴にはまることが多い。大事なのはブランドを拡張することではなく市場を拡張すること。「ブランドの焦点を絞り、消費者の頭の中にひとつの言葉を刷りこむことでどれだけの市場が想像できるか」と問うのが正解。

6. 信用力の法則:「あらゆるブランドの成功のカギを握る要素は“本物”の訴求」 顧客は懐疑的であり製品の訴求を容易に信用しない。しかし、「本物である」ことの主張は効果的。そしてリーダーシップこそ本物であることの信用力確立の近道。信用力はパブリシティを活用しようとする文脈ではとりわけ効果的。どんな小さな市場であっても単なる便益を売り込むという間違いを犯してはならない。いったん確立したリーダーシップの位置は容易に失われることはない。

7. 品質の法則:「品質は重要だがブランドは品質だけで築かれるものではない」 品質はあいまいな概念で他社との区別が必ずしも明確ではない。品質についての認識、評価基準は買い手の頭の中にある。強力なブランド構築には買い手の頭の中に強力な品質イメージを築かなければならない。高品質ブランドを構築するには、焦点を絞り、優れた名前をつけ、高い価格と組み合わせる必要がある。

8. カテゴリーの法則:「ブランドではなくカテゴリーを売り込む」 最も効果的なブランディングとは新たなカテゴリーの創造。焦点をゼロにまで絞り込み、全く新しい何かを始めること。それにはカテゴリーの先取りと売り込みを同時に行う必要がある。一番手の企業はカテゴリーを先取りできる、そしてリーダーになったら競合ブランドと戦うのではなく競合カテゴリーと戦うべきである。競合ブランドの存在はカテゴリーのパイの拡大に有益。

9. 名前の法則:「結局のところブランドとは名前である」 ブランドが短期的に生き残るためにはユニークなアイディアやコンセプトが必要になるが、長期的に残るのはブランド名。しかし、多くの企業はブランド名という重要資産を捨て、ライン延長方式による総称的な名前を選ぼうとする。今日ではあらゆる商品がコモディティ化して、ブランド名がなければその違いが分からない。

10. ライン延長の法則:「ブランドを破壊する最も簡単な方法は、あらゆる商品にそのブランド名をつけること」 あらゆる商品に同じブランド名をつけるというライン延長の悪例は数多くの業界で見受けられる。ライン延長を行う場合には、既存顧客がどう思うかを考えるべき。

11. 協調の法則:「カテゴリーを築くには競合ブランドの参入を歓迎すべき」 カテゴリー内の選択肢は需要を喚起する。ライバルと言う選択肢がなければ顧客はそのカテゴリーに懐疑的になる。だからカテゴリーのリーダーは市場シェアを根こそぎ奪おうとするべきではない。またブランドそれぞれが独自の絞り込みを行うことがカテゴリーの幅をさらに広げることになる。二大ブランドの存在、類似業者の集積といったカテゴリー内での健全な競争は多くの顧客をもたらすことになる。ライバルとの協調と競争のバランスが大切。

12. ジェネリックの法則:「失敗に至る一番の近道はブランドに総称的な名前をつけること」 多くの企業が大きくて広がりのある総称的な名前を選んで失敗している。総称的な名前を持つ成功企業は一番手であることで成功したのでありマネをするべきではない。総称的な名前はライン延長の落とし穴にはまる原因ともなる。

13. 企業の法則:「ブランドと企業には大きな違いがある」 多くの場合、ブランド名を企業名より重視すべき。企業はブランドを生み出す組織体であってブランドそのものではない。ベストなブランディング戦略は企業名をブランド名として使う方法。そうでなければブランド名を前面に出して社名は小さく出すこと。企業名はあくまでも脇役として考える。

14. サブブランドの法則:「ブランドがサブブランドの導入で破壊される場合がある」 典型的なライン延長戦略にもとづいてサブブランドを導入するのは誤り。多くの場合、顧客の頭の中にあるブランドのイメージと一致しない提案を行うことになる。ブランドには典型的な顧客像というべきものがあり、サブブランドはそれを正反対に導こうとする考え方。市場に後押しされないブランティングのコンセプトは何の成果も生まない。

15. 兄弟の法則:「第二のブランドを発信させるには時と場所を選ばなければならない」 第二のブランド戦略を誤ると既存ブランドのパワーがそがれることもある。第二のブランドと既存ブランド同士が競争し合うようなことにならないよう強い管理統制が必要。兄弟ブラントは共通の商品分野に焦点を合わせるがそれぞれ一つの特性を選んでセグメント化し、ブランド間に厳格な区分けをしなければならない。そして似通っていないブランド名を付けることも重要。兄弟ブランドを作るということは新カテゴリーを創出するということ。

16. 形状の法則:「ブランドのロゴタイプは目にフィットするようにデザインする」 ロゴは見やすく読みやすいことが重要。多くの企業がロゴの役割を過大評価している。多くの努力は顧客の頭の中でブランドのイメージを作りだすことに成功していない。効果的な証票となる単純なシンボルは数えるほどしかない。

17. 色調の法則:「競合企業と反対の色を使うべき」 色について第一の選択権はリーダー企業にある。リーダーはそのカテゴリーに最も似つかわしい色を選ぶが、その他の企業はそれとは対極の色を選ぶべき。

18. 国境の法則:「ブランドに国境はない」 成長するには危険を冒してもライン拡張策を取るしかないという考え方は間違い。グローバルブランドの構築が正解となる。国境を超えるとブランドの価値が高まることが多い。グローバルブランドになるには一番手であることと商品イメージが自国の評価と合致していることが必要。

19. 一貫性の法則:「ブランドは一夜では築けない。成功は何十年単位で測定される」 一番頻繁に破られるのが一貫性の原則。ブランドはそれが何かを表すものでない限り人々の頭の中に入っていかない。ブランドは同じところにとどまるべきもの。一貫性の欠如はブランドの破壊をもたらす。企業は自らのブランドの境界線をはっきりと限定すべき。

20. 変更の法則:「ブランドは細心の注意を払えば変更できる場合もある」 変更の法則はブランディングの法則の最大の例外。ブランドが弱体でイメージが浸透していない場合、価格帯を下げて利益を確保する場合、うまみの少ない市場で変化の予兆がある場合などは変更が有益なこともある。ただし、変更には細心の注意が必要で顧客の頭の中をしっかりと理解しなければならない。

21. 寿命の法則:「永遠の命を持つブランドは存在しない」 あらゆるブランドがいつか死滅する。滅びつつあるブランドにではなく将来性のある新たなブランドに投資すべき。

22. 特異性の法則:「ブランドの最も重要な側面は一つの物を追求するひたむきさ」 特異性を喪失するとブランドは弱体化する。ブランドとは顧客の頭の中に企業が刷りこんだただ一つのアイディアないしはコンセプト。それはとても単純でありながらやっかいなものでもある。

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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2017.01.25更新

宮田識氏はキリンビバレッジの『生茶』のリニューアルを主導した一流クリエイティブディレクターです。佐藤可士和氏、奥山清行氏、佐藤オオキ氏、水野学氏など一流のクリエイティブディレクターの著書で強調されていることはよく似ています。いずれもデザイン技術よりもものの見方やコンセプトについて多面的に語っています。
クリエイティブディレクターの視点はあらゆる仕事の定義に有益であると思います。たとえばISO9001の品質の定義を深掘りするにはこうした視点が不可欠で、それなしでは柔軟性のないシステムになり形骸化しやすいと思います。


宮田識『Draft宮田識 仕事の流儀』抄録

1. 準備こそ勇気の源。準備が足らないから弱くなる。勝負するための手立てを持っていなければダメ。仕事で人にあう時にはあらゆる準備が必要。

2. 今日会う仕事相手と何を話すかを考える。それにはこの仕事に対して自分がどうしたいのかを整理する。当然そこには自分の気持ち、生き方まで入ってくる。

3. まずは相手を知る。会いに行くときは自分が知りたいことは何か?それを引き出すにはどんな質問をすればよいかを考える。

4. レイアウト、色を付ける、形を決めるという一般的なデザインのイメージにとらわれない。表現としてのデザインにとらわれすぎない。

5. 若いデザイナーには勇気が必要。流ちょうに話すことではなく、自分の思いを言えるかどうかが大切。震えてもいいから最初の一歩を踏み出す。

6. 努力がなかなか実を結ばず、何かのきっかけで突然伸びることがある。きっかけをつかむには常日頃からアンテナを張っていなければならない。

7. きっかけはいつ来るかわからない。若いころにチャンスが来る人もいれば40歳、60歳でチャンスをつかむ人もいる。

8. 「おかしい」「気になる」という感覚が大事。こうした気づきから知識が広がり、それらがつながり、自分の中の世界観が出来てくる。

9. デザインはジグソーパズル。大勢がそれぞれの力を合わせ、そのすべてがうまくはまらないといけない。

10. 狭義のデザインとは色、形、文字などの美しさ、見え方や伝え方を考えるスキルとしてのデザイン。広義のデザインとは、幸せな生き方や理想の社会について考えること。色や形の前にまず世界観がある。

11. デザインとは何かという前提が違えば成功と失敗の定義も違ってくる。

12. 毎日の仕事に振り回されていてはダメ。スポーツ選手は試合以外でも厳しい練習をしている。それに比べてデザイナーは甘い。「どれだけ練習したか?」ということ。

13. 人工知能の進歩でデザインを取り巻く状況は激変した。「デザインとは何か?」を改めて自分に問いかける時期にきている。

14. デザイナーはデザインの基本的な歴史や技術、知識をもっとしっかり学んだ方が良い。原則を知ることはとても大事。

15. たとえば、デザイナーの仕事の原点である「文字」の書体成立の経緯すら知らない人が多い。原則を知らずに応用に走る傾向がある。

16. デザイナーはデザインのプロとして基本を見なおすべき。きれいな線が引く、色を合わせる、という基本に立ち返って学び直す。

17. こなすだけの仕事にならないためにクライアントとの関係づくりは大切。顧客企業には目的があり、制約条件がある。顧客企業の目的を深く理解して良い関係を作る。

18. 表現したいことと実際にできることは違う。技術が足りなければ勉強するしかない。勉強といっても難しいことではない。見て、読んで、聞いて、書いて、そこから何かをつかむ。ただし続けることが大事。

19. どのデザインがいいかも大事、どう決めるかをデザインすることも大事。デザインが決まらない理由は、決めるべき人やキーマンにリーチ出来ていない状態。

20. 協調性を持つ若者は伸びる。自分の居場所を自然に見つけることができるから。協調性を持つ人は自分の役割を自然に探しだす。

21. 聞くことが個性を作る。質問の仕方で答えは変わる。聞くことが積み重なって自分の個性や表現が作られていく。

22. ブランディングで最も大切なのは作る人の気持ち。

23. 相手を知る努力を怠っていたらいい仕事はできない。

24. 一発OKが一番良いが、ダメ出しは気づきのチャンスでもある。

25. 目を肥やすにはどうすればいいか。まずは数多くの事例を見ること。

26. デザインする力は誰にでも必要。工場で働く人、売り場の販売員、会社の経営者もデザイナー。

27. 誰もが何かをデザインしている。自分が何をデザインするのかを考える。

28. 今必要なのはビジネス全体をデザインし直す視点。

29. 信長も空海もクリエイティブディレクターだった。

30. クリエイターにとって感性が重要なのは間違いないがニーズや市場を理解する理性も大切だ。

31. 特にクリエイティブディレクターは左脳的な部分が重要。今後はデザイナー出身ではない左脳タイプのクリエイティブディレクターがたくさん増えるかもしれない。

32. 基礎となる思想・考え方と優れた感性を持ち合わせていればクリエイティブディレクターに絵をかく技術は必要ない。

33. 感性を磨くには最高の「本物」をたくさん見るとよい。

34. クライアントの考えがまとまっていない場合も多い。だがクライアントとデザイナーがお互いに分かり合っていればこのやっかいな前工程をうまく処理できることもある。クライアントとデザイナーが一緒に考えることが大切。

35. 自分が今考えていることが間違っているかどうかを知るには判断材料がたくさん要る。だからもっと勉強してほしい。「なぜもっと本気でやらないんだろう」と思える人が多い。

36. 勉強しないのに独立しようとするデザイナーがいる。「苦労は覚悟の上です」というがデザイナーとしてしなくていい苦労はする必要がない。不要な苦労を選び、必要な苦労を避けるのはなぜか。

37. ルールや制約を挑戦しない言い訳にしない。特にクリエイターの側が自分で勝手なルール、限界、壁を設定することが怖い。クライアントが深く考えずに言ったことをうのみにしてしまう若い人が多い。

38. 成功するまでやり切ると結果的に失敗が無くなる。

39. 好きなことを突き詰める。そこから自分らしさが生まれる。

40. 「表現」より「考え方」にこだわる。考え方は世の中の10歩先を行くけれど表現は1歩先ぐらいでちょうどいい。

41. いい仕事をするには発言力が必要。勉強しなければ発言力は持てない。発言力とは提案力のこと。発言力がなければ言われるがまま仕事をこなすだけになる。

42. 提案力とは見聞きし学んだことをつなげたり広げたりして何らかの方向性を見つける力。勉強しなければ提案力は養えない。

43. 良いデザインをするためにはクライアントと対等のパートナーになる必要がある。複雑なことをわかりやすく整理してくれる、本質をズバリと言ってくれる、解決策を提案してくれる。こんなデザイナーならばクライアントは喜んで付き合ってくれるはず。

44. 相手のことを知るために一生懸命勉強し準備する。自分の考えをしっかり持つ。時には相手と戦う。それでこそクライアントと対等になれる。それには普段の生き方が大事。

45. 良いデザインとは何か。社会に必要とされ役立ってこそ良いデザイン。

46. 一日一日、一つの仕事をやり切る、やり尽くす。その生き方そのものが仕事の流儀になる。

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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2017.01.20更新

マーケティングの大家・コトラーの近著の要約です。マーケティング4.0は「自己実現」のコンセプトが中核にあるそうですが、本書からはそれがまだ良くうかがわれません。

デジタルの時代になり、既存のマーケティング理論に大幅な修正が必要になったこと。中でも、若者、女性、ネチズン(ネットの住人)の影響力が高まったことが説明されています。

まだ翻訳書が出ていませんので、私が概要をまとめました。

 

Philip Kotler," Marketing 4.0 -Moving from traditional to digital-" フィリップ・コトラー編著『マーケティング4.0』抄録


1. 市場はより水平的、包括的、社会的な事業形成に向かってシフトしている。

2. ソーシャルメディアによって地理的・人口構成的障壁が克服され、市場はより包括的になった。人はつながり、コミュニケートし、企業はコラボレーションを通じて革新を起こすようになった。

3. 顧客は水平的な関心を持つに至り、ブランドによるコミュニケーションに対してより用心深くなり、代わりに友人・家族・ファン・フォロワー(Fファクター)への信頼を増している。要するに顧客の購買プロセスは以前より社会的になったのである。

4. 顧客は決定の際に社会的サークルにより注意を払うようになり、オンライン・オフラインを問わずアドバイスやレビューをより求めるようになった。

5. 購買風景の変化はマーケッターにオンライン・オフラインの相互影響のパラドックスを突きつけるようになった。どちらも相互補完的ではあるが、情報を提供する一方で混乱ももたらされるようになった。

6. つながりによって豊富な情報が得られるようになったが、顧客はより他人の意見に依存するようになった。それが個人の好みを超えるほどの影響を与えている。

7. つながりはブランドへの献身をもたらす一方、否定的な意見も引き出すようにもなった。しかし否定的意見がしばしば肯定的意見をもたらすこともあり、それは必ずしも悪いことではない。

8. 若者、女性、ネチズン(ネットの住人)は分離されたセグメントとして考えられてきた。しかし、彼らの集合的強さ特にデジタル時代における影響力は十分理解されているとは言えない。

9. 若者は新製品・新技術の先進的なユーザーであり、しばしばトレンドを生み出す。究極的にはビジネスのゲームを変える存在である。女性は家庭の管理者であり、財務大臣として購買の決定権を握っている。ネチズンはオンラインの世界でのつながりを作り、意見を広める人たちである。

10. デジタルエコノミーにおいては若者、女性、ネチズンがマーケティングのカギを握っている。

11. マーケティング4.0では企業と個人、ブランドとスタイルのつながりがオンライン・オフラインの両方を通じて生み出される。機械と機械、人と人を結びつける。このコンセプトはデジタル時代のマーケターの助けになるだろう。

12. デジタル・マーケティングと伝統的なマーケティングはマーケティング4.0において共存し、あらたな顧客を生み出すだろう。

13. デジタルエコノミーでは、顧客行動は5つの段階(気づき・アピール・質問・行動・代弁=5A)に再定義される。これらは顧客のつながりを反映している。マーケティング4.0とは顧客を気づきの段階からブランドの代弁者に導くことである。これを行うには、私たち・その他の人々・外部という3つの影響のステージ(3O)をテコにする。この3つのステージはマーケティングの努力を最適化するだろう。

14. 顧客の購買の5段階(5S)は新たな行動指標(PAR)とブランド代弁度の指標(BAR)をもたらす。こうしてマーケッターはマーケティング活動の実効性を確かめることができる。

15. 5Aのフレームワークを使った分析を図解すると、その形状から、ドアノブ、トランペット、じょうご、金魚の4つのパターンにまとめられる。多くの産業はこの4パターンで理解され、ブランドやサービスのマネジメントにおけるベストプラクティスを実践できるようになる。

16. 人間中心の時代にあって、ブランドは人間的な要素に注目する必要が増した。顧客の隠れた不安、欲求を多様な観点から理解するとともに、自らのブランドに人間的な側面を築く必要が出てきた。ブランドは物質的、知的、社会的、情緒的な側面から強いパーソナリティとモラルをアピールしなければならない。

17. マーケッターはますます広告からコンテンツのマーケティングにシフトしている。コンテンツを生み出すために顧客との会話がカギとなる。

18. 顧客はチャネルを移動しつつ、境界のない経験を期待する。こうした新しい現実に対し、マーケッターはオンライン・オフラインを統合し、タッチポイントを良く考え、顧客を購買へと導かなければならない。

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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2017.01.17更新

日経新聞の記事で「競争戦略」についてコンパクトなまとめが書いてありましたので、ご紹介するとともに基本的な考え方を整理したいと思います。

 

日経新聞(1月17日)の西条都夫編集委員の記事の要約

1. 経営者の多くは「事業戦略」「競争戦略」という言葉をあいまいに使っている。売上・利益の目標自体は戦略ではない。

2. 戦略とは「価値ある独自性」の追求のこと。横並びから脱し、他では提供できない価値を顧客に届けることだ。

3. 収益力の源泉となるユニークさを実現する手立てはいろいろある。しかし、最終的な目的地は独自性の確立にある。その実現に向けて青写真を描き、旗を振るのが経営者の役割。

4. 例えばベビー用品大手のピジョンは15%超の高い営業利益率を誇る。同社の原動力は「生後18か月までの赤ちゃん」に的を絞ったことにある。この年齢の赤ちゃんの哺乳に関わるニーズは万国共通。このニーズに対して「いい哺乳器」を開発できれば世界中で通用する。少子化の日本ではなく海外での売上を伸ばしている。

5. ピジョンのように「何をするか」が明確になれば「何をしないか」もはっきりする。ベビー服は哺乳器よりもはるかに市場が大きいが、技術による差別化が難しく、消費者の好みも違うので参入しない方針を選んでいる。

6. ピジョンには最初から明確な戦略があったわけではないが、多くの試行錯誤の結果として現在の戦略が導き出されている。

7. 「工場向けのアマゾン・ドット・コム」の異名のあるミスミ・グループの場合、けた違いに多い取扱品目を用意し、多様な注文に素早く届けるサプライ・チェーンを整えたことで競争優位を築き上げた。本来、利が薄いはずの中間流通と言う業態でありながら10%を超える営業利益率を誇るのは同社の戦略の勝利。

8. あなたの会社に「価値ある独自性」はあるだろうか。

 

記事のタイトルの割には競争戦略の解説があまりありません。競争戦略はマイケル・ポーターの提起した考え方なので、以下にその概要をまとめておきます。

競争戦略とは「業界」において収益性の高い独自性のあるポジションを築き、競争優位を確保することです。

「業界」は地理的範囲、提供価値の類似性の二つの視点で個別・具体的に考える必要があります。

地理的範囲とはターゲット顧客のいる範囲のことです。また、提供価値は製品サービスそのものではなく、顧客の課題に対する解決策の提案のことです。一つの企業が複数の価値提供を行っている場合も良くあります。

業界内での独自性のあるポジションは他社とは異なる活動の組み合わせによって得られます。こうした試行錯誤を通じて活動の調整を行うことを「フィット」と言います。

試行錯誤には軸となる基本方針に対する一貫性が必要です。

また、独自性とは顧客から見て意味のある違いがあることです。その結果としてライバル社と違った価値提案になるわけです。ライバルではなく顧客ニーズに注目することが独自性追求のポイントです。

そして差別化とは独自性があって、しかも高価格(もしくは高い利益)が得られることです。独自性があっても利益が上がらない状態であれば差別化の失敗です。

独自性は差別化の前提という位置づけになります。独自性戦略といわず、差別化戦略という理由は、利益がなければ事業が成功したといえないからです。

 

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2017.01.16更新

昨年のベストセラー『嫌われる勇気』の抄録です。特にビジネスマンに役立ちそうなところを中心にまとめてみました。
アドラーの特徴は、人の行動には必ず「目的」があるという前提に立って、心の在り方を変えるための視点をわかりやすく提示してくれることにあります。
正しい努力の方向性を考えるのに役に立つ物の見方だと思います。

 

『嫌われる勇気』抄録

1. われわれは何かしらの「目的」に沿って生きている。

2. 過去の原因ではなく今の目的を考える。

3. 例えば、「外に出たくない」から「不安」と言う感情を作りだしている。

4. 「怒り」の感情も出し入れ可能な道具。

5. 「トラウマ」の存在は明確に否定する。

6. 経験によって決定されるのではない。経験に与える意味によって決定する。

7. 問題は「なにがあったか」ではなく「どう解釈したか」にある。

8. 変わることの第一歩は知ることにある。

9. 答えは誰かに教えてもらうものではなく自らの手で導き出すもの。

10. 今のあなたが不幸なのは自分自身が「不幸であること」を選んだから。

11. 問題は自分の性格ではなく世界観にあると考える。

12. あなたのライフスタイルを自ら選んだものである。だから再び自分で選び直すことも可能なはず。

13. あなたが変われないのは「変わらない」と決心しているから。

14. 新しいライフスタイルを選ぶと未来が見通せずに不安になる。だから多くの人は色々と不満があっても「このままの私」でいることのほうが楽だし安心と考え「変わらない」ことを選ぶ。

15. 多くの人には「幸せになる勇気」が足りない。

16. 最初にやるべきことは何か。それは「今のライフスタイルをやめる」という決心。

17. 「もし○○だったら」と可能性の中に生きているうちは変われない。変えない人は変えないことで「やればできる」という可能性を残そうと思う。

18. 自分の短所ばかり気になる人は「自分を好きにならないでおこう」と決心している。

19. 実行しなければ可能性の中に生きることができる。

20. 自分の短所ばかり見つめる人は対人関係で傷つくことを過剰に恐れている。「目的」を「他人との関係の中で傷つかないこと」と決めている。

21. 人間の悩みはすべて対人関係の悩みである。

22. 個人だけで完結する悩み、いわゆる“内面の悩み”などというものは存在しない。

23. われわれを苦しめる劣等感は「客観的な事実」ではなく、「主観的な解釈」である。

24. 人は無力な状態から脱したいと願う普遍的な欲求を持っている。*優越性の追求

25. 一歩踏み出す勇気をくじかれ「状況は現実的な努力で変えられる」という事実を受け入れられない人たちがいる。なにもしないうちから「どうせ自分なんて」とあきらめてしまう。彼らは劣等コンプレックスを抱いている。

26. 劣等コンプレックスとは自らの劣等感を言い訳に使い始めた状態。

27. *見かけの因果律 :本来は何の因果関係もないところに、あたかも重大な因果関係があるかのように自らを説明し、納得させてしまう。

28. 「AだからBができない」と言う人は、「Aさえなければ、わたしは有能であり価値があるのだ」と暗示しようとしている。

29. 劣等感を長く持ち続けられる人はいない。だから人は欠如した部分を埋めようと努力する。その勇気がない人は劣等コンプレックスに陥る。

30. 例えば「学歴がないから成功できない」と考える人は「もしも学歴さえ高ければ自分は容易に成功できたのに」と自らの有能さを暗示する。そして「本当の私は優れているのだ」と納得しようとしている。

31. *優越コンプレックス :あたかも自分が優れているかのように振る舞い、偽りの優越感に浸ること。

32. 派手なブランド品を身に付けたり、有名人とのつながりを自慢する人などには優越コンプレックスがあるのかもしれない。

33. 権威の力を借りて自分を大きく見せている人は、他人の価値観に生き、他人の人生を生きている。

34. わざわざ言葉にして自慢している人は、むしろ自分に自信がない。

35. *不幸自慢 :自慢げに病気や不遇な生活を語ること。劣等感を裏返しにして特異な優越感に至るパターン。不幸であることで「特別」であろうとし、不幸という一点において人の上に立とうとする独特なコンプレックス。

36. 健全な劣等感は他人との比較の中ではなく「理想の自分」との比較から生まれる。

37. 今の自分よりも前に進もうとすることに価値がある。

38. 競争や勝ち負けを意識すると必然的に生まれてくるのが劣等感。

39. 社会的成功をおさめながらも幸せを実感できない人が多いのは彼らが競争に生きているから。

40. 相手の言動に本気で腹が立った時には、相手が「権力争い」を挑んできていると考える。相手は勝つことによって自らの力を証明したいと考えている。

41. 怒りはコミュニケーションの一形態だが、怒りという道具に頼る必要はない。

42. われわれには言葉がある。言葉によってコミュニケーションが取れる。言葉の力、論理の力を信じる。

43. 誤りを認めること、謝罪の言葉を述べること、権力争いから降りること、これらはいずれも「負け」ではない。

44. 他人を敵とみなし、仲間と思わない人は「人生のタスク」から逃げている。

45. *人生のタスク :【行動面の目標】 ①自立する ②社会との調和 【心理面の目標】 ①「私には能力がある」との意識 ②「ひとびとは私の仲間である」との意識

46. 仕事の対人関係は最もハードルが低い。成果というわかりやすい共通目標があるため、少しくらい気が合わなくても協力できるし、協力せざるを得ない。

47. 学校や職場のような「場」があれば関係は構築しやすい。

48. 友達や知り合いの数には何の価値もない。考えるべきは関係の距離と深さ。

49. アドラーは相手を束縛することは認めない。相手が幸せそうにしていたら、その姿を素直に祝福できる。それが愛。

50. 束縛とは相手を支配しようとする心の表れであり、不信感に基づく考え。

51. 恋愛関係、夫婦関係には「別れる」という選択肢があるが、親子関係はそうはいかない。親子関係からは逃げられない。

52. Aさんを嫌う場合、あなたには「Aさんのことが嫌いになる」という目的が先にあり、その目的にかなった欠点を後から見つけ出そうとする。それをAさんとの対人関係を回避するために行っている。

53. さまざまな口実を設けて人生のタスクを回避しようとする事態を指して「人生のウソ」という。

54. 目的論の立場に立って自らの人生を、自らのライフスタイルを自分の手で選ぶ。

55. 他人からの承認を求めるべきではない(認めてもらおうと思わない)。

56. 賞罰教育の結果生まれるのは、「ほめてくれなければ適切に行動しない」「罰する人がいなければ不適切な行動もとる」という誤ったライフスタイル。

57. われわれは他人の期待を満たす必要はない。他人からの承認を求め、他人からの評価ばかりを気にしていると、最終的には他人の人生を生きることになる。

58. 他人はあなたの期待を満たすために生きているのではない。

59. われわれは「これは誰の課題なのか?」という視点から自分の課題と他人の課題とを分離していく必要がある。

60. あらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むことで起きる。

61. 誰の課題かを見分ける方法はシンプル。「その選択によってもたらされる結末を最終的に引き受けるのは誰か?」という視点。

62. 自分を変えることができるのは自分しかいない。

63. たとえば「引きこもり」は本人が解決するべき課題で親が介入することではない。ただし、何らかの援助は必要。子供が窮地に陥った時に、素直に親に相談しようと思える信頼関係が築けているかがポイント。

64. 自分にできるのは「自分の信じる最善の道を選ぶこと」。しかし、その選択について他人がどのような評価を下すのかは他人の課題であり自分にはどうにもできない。

65. 例えば、上司がたびたび怒鳴りつけ、がんばりを認めてくれず、まともに話も聞いてくれないと言う人がいる。しかし、上司に気に入られ、認めてもらうことは最優先の仕事ではない。その人は「うまくいかない仕事」の言い訳として『嫌な上司』の存在を必要としている。

66. 課題の分離ができれば上司がどれほど理不尽な怒りをぶつけようと、自分には関係がないとわかる。理不尽な感情は上司が自分の問題として始末するべき課題であるとわかる。すり寄る必要はないし、自分を曲げてまで頭を下げる必要はない。

67. 他人の課題には介入せず、自分の課題には誰ひとりとして介入させなければよい。

68. 課題の分離は対人関係の最終目標ではなく、その入り口。

69. アドラー:「困難に直面することを教えられなかった子供は、あらゆる困難を避けようとするだろう」。

70. 他者の課題に介入しようとすることは自己中心的発想。

71. 自由とは他者から嫌われることである。誰かから嫌われているということは自由を行使していることである。自由にはコストが伴う。

72. 他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを恐れず、承認されないかもしれないというコストを支払わない限り、自分の生き方を貫くことはできない。

73. 幸せになる勇気には「嫌われる勇気」も含まれている。

74. 対人関係のカードは常にわたしが握っている。

 

 アドラー

 

 

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2017.01.13更新

昨年末、日本プロジェクトマネジメント協会第217回例会で行った講演内容の概要を記しておきます。サイバーセキュリティと言わず、あえてサイバーリスクのマネジメントと表現している理由は、通常のマネジメントとの関係性がよりわかりやすくなると考えてのことです。また、サイバーセキュリティという場合、サイバー空間での情報セキュリティという狭い定義になるのを避けるという意味合いもありました。サイバーリスクのマネジメントということで、通常のリスクマネジメントの方法論がそのまま利用できることになります。 

 

「 サイバーリスクのマネジメント ―コンプライアンスとしての安全・安心― 」

1. コンプライアンスとは法令遵守ではなく法令「等」遵守と理解するべき。社会常識を逸脱した企業行動には法的制裁以上に厳しい社会的制裁が待っている。

2. コンプライアンスの対象範囲は広い。「知っていることには責任が生じる」というドラッカーの「野獣の原則」の視点が有効。

3. サイバー攻撃が頻繁にニュースで伝えられ出したのは2011年。つまりそれ以後、サイバーリスクは社会常識化し、コンプライアンスの対象とすべきテーマとなった。

4. サイバーセキュリティはサイバー空間での情報セキュリティと捉えられがち。情報セキュリティとは「情報資産の安全管理」のことであるが、サイバーリスクは更に広い。だからサイバーセキュリティよりサイバーリスクのマネジメントという方が経営管理制度となじみやすいかもしれない。

5. サイバーリスクのマネジメントは「サイバー空間での安全・安心」を目的とするもの。安全は品質の一種、安心は顧客満足の一種なので品質管理の延長上の問題として捉えられる。

6. サイバーリスクを完全になくすことはできない。そこで「サイバー空間での安全運転」という視点が有効。交通事故は防ぎきれないが安全運転が必要であることはサイバーリスクについても言える。

7. リスクマネジメントとは、リスクを識別、評価、対応するという3つのステップで行う。

8. リスクを識別するにはリスクについての知識が必要。サイバー関連記事が基本となる。

9. リスク評価は発生確率と影響度(ダメージ)の2軸で評価する。

10. 評価したリスクは回避、移転、低減、受容の4つの内から対応策を必ず選ぶ。サイバー空間の利用は止められないので回避は不可能。

11. 移転とは保険・外注化等で組織外にリスクを移すこと。現代では情報漏洩保険が整備されてきているので最低限の移転は必要。

12. リスク低減こそリスクマネジメントの本丸。いかに「より安全な運転ができるか」を考え実行する。

13. 受容はリスクとコストのバランスを考えてあえて行動しないこと。単なる「放置」とは全く違う。

14. サイバーリスクを放置するサイバー無策は高くつく。経営リスクの一つとしてマネジメントすることが必要だ。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2017.01.13更新

昨年末、日本プロジェクトマネジメント協会第217回例会で行った講演内容の概要を記しておきます。サイバーセキュリティと言わず、あえてサイバーリスクのマネジメントと表現している理由は、通常のマネジメントとの関係性がよりわかりやすくなると考えてのことです。また、サイバーセキュリティという場合、サイバー空間での情報セキュリティという狭い定義になるのを避けるという意味合いもありました。サイバーリスクのマネジメントということで、通常のリスクマネジメントの方法論がそのまま利用できることになります。 

 

「 サイバーリスクのマネジメント ―コンプライアンスとしての安全・安心― 」

1. コンプライアンスとは法令遵守ではなく法令「等」遵守と理解するべき。社会常識を逸脱した企業行動には法的制裁以上に厳しい社会的制裁が待っている。

2. コンプライアンスの対象範囲は広い。「知っていることには責任が生じる」というドラッカーの「野獣の原則」の視点が有効。

3. サイバー攻撃が頻繁にニュースで伝えられ出したのは2011年。つまりそれ以後、サイバーリスクは社会常識化し、コンプライアンスの対象とすべきテーマとなった。

4. サイバーセキュリティはサイバー空間での情報セキュリティと捉えられがち。情報セキュリティとは「情報資産の安全管理」のことであるが、サイバーリスクは更に広い。だからサイバーセキュリティよりサイバーリスクのマネジメントという方が経営管理制度となじみやすいかもしれない。

5. サイバーリスクのマネジメントは「サイバー空間での安全・安心」を目的とするもの。安全は品質の一種、安心は顧客満足の一種なので品質管理の延長上の問題として捉えられる。

6. サイバーリスクを完全になくすことはできない。そこで「サイバー空間での安全運転」という視点が有効。交通事故は防ぎきれないが安全運転が必要であることはサイバーリスクについても言える。

7. リスクマネジメントとは、リスクを識別、評価、対応するという3つのステップで行う。

8. リスクを識別するにはリスクについての知識が必要。サイバー関連記事が基本となる。

9. リスク評価は発生確率と影響度(ダメージ)の2軸で評価する。

10. 評価したリスクは回避、移転、低減、受容の4つの内から対応策を必ず選ぶ。サイバー空間の利用は止められないので回避は不可能。

11. 移転とは保険・外注化等で組織外にリスクを移すこと。現代では情報漏洩保険が整備されてきているので最低限の移転は必要。

12. リスク低減こそリスクマネジメントの本丸。いかに「より安全な運転ができるか」を考え実行する。

13. 受容はリスクとコストのバランスを考えてあえて行動しないこと。単なる「放置」とは全く違う。

14. サイバーリスクを放置するサイバー無策は高くつく。経営リスクの一つとしてマネジメントすることが必要だ。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2017.01.07更新

クリステンセン論文の第四弾です。ここでは顧客ニーズをジョブという切り口で実務に応用しやすい形を提起しています。このジョブはドラッカーが「価値・効用」と呼んだものですが、実務的に言えば「困りごと」「宿題」「もやもやしていること」とでもいうと理解しやすいかもしれません。

また価値提案の明確化はマイケル・ポーターが「トレードオフ」と呼んだ、二者択一の視点として理解できそうです。この論文の実務的有用性は高いと思います。

  

第七章

セグメンテーションという悪弊

―「ジョブ」に焦点を当てたブランド構築が必要―

 

1 毎年新発売される消費財は3万種類に上るというが、その9割以上が失敗している。何かが間違っているはずだ。

2 その原因は、従来の市場細分化手法、ブランド構築手法、顧客を理解する方法が機能しなくなった。つまりマーケティングのパラダイムが崩壊しつつあることにある。

3 セオドア・レビットは「消費者は四分の一インチ径のドリルを買いたいのではない。彼らが欲しいのは四分の一の穴だ」と言った。しかし、マーケターはドリルの種類と価格で市場をセグメントしようとする。肝心の穴ではなく、自社のドリルの特徴や性能をライバルと比較評価しようとする。

4 このようにマーケターは往々にして問題解決を見誤る。顧客ニーズと無関係な方法で商品を改良してしまうのだ。

5 市場構造は顧客の目にはきわめて単純に映っている。顧客は何らかの「ジョブ」を処理する必要があるだけなのだ。簡単に言えば、商品を「雇い」、自分の代わりにそのジョブに当たらせるのだ。

6 マーケターの役割は、顧客の実生活において、自社の商品が雇われる可能性、つまりどのような「ジョブ」が発生するかを理解することに他ならない。

7 マーケターがそのジョブを理解し、それを肩代わりする商品、購入体験や仕様体験を設計し、意図した使用目的を補強する商品を作ることができれば、そのジョブを処理する必要性に気づいた顧客はお金を支払ってもその商品を雇う。

8 分析の基本単位は顧客ではなく「ジョブ」であるべきだ。

9 あるファーストフードチェーンがミルクシェークの分析をしたところ、最も多い購入パターンは早朝1人で来店し、ミルクシェークだけを買って自分の車の中で飲むというものだった。顧客は自動車通勤の退屈さの解決手段として、また10時ぐらいまで腹持ちさせたいというジョブを処理するためにミルクシェークを買っていたのだ。このジョブの分析によって適切な打ち手を考えることができた。

10 顧客のジョブの処理に最もふさわしい商品がまだ存在しないものも多い。こうしたジョブを処理する商品を設計し、しかるべきブランド・ポジショニングを実施すれば新たな成長市場が誕生するだろう。

11 ある企業は重曹の事業について、「口腔内を清潔にし、清涼感を与える」「冷蔵庫内の臭いを消す」「腋の下を清潔、快適に保つ」「カーペットを清潔にし、臭いを消す」「猫の排せつ物の臭いを消す」「衣類に新鮮な香りを与える」というジョブに注目し、事業を多角化させた。

12 特定のジョブを処理する時にまず頭に浮かぶ商品を「目的ブランド」と呼ぶ。「荷物を間違いなく確実にできるだけ速やかに送る」ジョブに対するフェデックスが典型。

13 広告だけでブランド構築はできない。ただし、広告はそのブランドが特定のジョブに適していることを伝えることはできる。必要なジョブが存在し、そのジョブにふさわしい商品が存在することを人々に気付かせることはできる。

14 優れたブランドのほとんどは広告宣伝を始める前にすでに構築されている。ゼロから広告によって消費者が信頼するブランドを構築しようと試みると骨折り損に終わる。

15 強力な目的ブランドの構築に成功したらどう活用すべきか。それには一般原則がある。

16 原則の一つは、同じジョブを処理する別の商品を追加すること。このやり方ならブランド・イメージをあいまいにする心配なく展開できる。

17 もう一つ原則は、目的ブランドを特定のジョブ専門とすること。違う価値を提供する場合には別のブランドをたてる必要がある。もしくは親ブランド化して複数のジョブに対処するために子ブランドをつくる。

18 このようにジョブという切り口に焦点を当てると競合商品と差別化できる。ただし、そこで難しいのは特定のジョブを遂行できると伝える場合、その他のジョブは遂行できないことを伝えることにもなる。

19 しかし、特定のジョブを完璧に処理する目的ブランドになればプレミアム価格が付けられる。そしてセグメンテーションで考えた市場よりも大きな市場で競争できる。

20 自動車メーカーには目的ブランド構築が不十分で差別化ができていない企業が多い。

 

 

 

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

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