浅沼宏和ブログ

2017.01.27更新

著者のアル・ライズはジャック・トラウトと共に「ポジショニング」という重要な考え方を広めた人です。ポジショニングを知らなければマーケティングは語れないというほどの影響力がありました。そして本書はポジショニング戦略の解説的内容になっています。自社の価値提案が「落とし穴」にはまらないようなチェックリストと考えるとよいと思います。

アル・ライズ/ローラ・ライズ著『ブランディング22の法則』抄録

1. 拡張の法則:「ブランドの力はその広がりに反比例する」 多くの企業がブランドのコンセプトを頼りにラインを延長させようとして失敗している。顧客はブランドの範囲が狭く、ただ一語で識別できるブランドを望む。ライン延長は短期的には売り上げを伸ばすが、長期的にはブランド力を低下させる。

2. 収縮の法則:「焦点を絞り込む時、ブランドは強力になる」 ブランドを拡張するより収縮させる方が良い結果が生まれやすい。ところが多くの企業はブランドを拡張させようとして失敗している。成功企業は焦点を絞り込んでチャンスをつかんだ。良い結果は焦点を絞る時に生まれる。

3. パブリシティの法則:「ブランドは広告によってではなくパブリシティによって生まれる」 パブリシティとはメディアに好意的に取り上げられること。そのベストな方法は新しいカテゴリーにおける一番手になること。メディアは新しいもの、強烈なものを報じたがるのであり、必ずしも優れたものを報じるわけではない。今日、ブランディングに役立つのはパブリシティであって広告ではない。多くの企業が広告を主要なコミュニケーション手段と考える間違いを犯している。

4. 広告の法則:「いったん誕生したブランドは、その健康を維持するために広告を必要とする」 パブリシティが成功し、もはや新たに語るべきニュースが無くなった時こそ広告の出番。特にリーダー企業は広告予算を投資と考えるのではなく、競合の攻撃から生じる損失を防ぐ保険と考えるとよい。そして広告では自社製品のリーダーシップを強調するべきであり、品質の部分的な一面を強調するべきではない。広告は強力なツールだが、それは生まれたてのブランドがリーダーシップを築くためではなく、確立したリーダーシップを維持するための手段。

5. 言葉の法則:「消費者の頭の中にひとつの言葉を浸透させるようにする」 ブランド構築のために見込み客の頭の中にひとつの言葉を刷りこませるように努力を集中すべき。それは他社が使っていない言葉であること。いったん言葉が浸透すると競合相手がその言葉を奪い取ることはほとんど不可能になる。しかし、刷りこみに成功したブランドがそのベースを広げようとする落とし穴にはまることが多い。大事なのはブランドを拡張することではなく市場を拡張すること。「ブランドの焦点を絞り、消費者の頭の中にひとつの言葉を刷りこむことでどれだけの市場が想像できるか」と問うのが正解。

6. 信用力の法則:「あらゆるブランドの成功のカギを握る要素は“本物”の訴求」 顧客は懐疑的であり製品の訴求を容易に信用しない。しかし、「本物である」ことの主張は効果的。そしてリーダーシップこそ本物であることの信用力確立の近道。信用力はパブリシティを活用しようとする文脈ではとりわけ効果的。どんな小さな市場であっても単なる便益を売り込むという間違いを犯してはならない。いったん確立したリーダーシップの位置は容易に失われることはない。

7. 品質の法則:「品質は重要だがブランドは品質だけで築かれるものではない」 品質はあいまいな概念で他社との区別が必ずしも明確ではない。品質についての認識、評価基準は買い手の頭の中にある。強力なブランド構築には買い手の頭の中に強力な品質イメージを築かなければならない。高品質ブランドを構築するには、焦点を絞り、優れた名前をつけ、高い価格と組み合わせる必要がある。

8. カテゴリーの法則:「ブランドではなくカテゴリーを売り込む」 最も効果的なブランディングとは新たなカテゴリーの創造。焦点をゼロにまで絞り込み、全く新しい何かを始めること。それにはカテゴリーの先取りと売り込みを同時に行う必要がある。一番手の企業はカテゴリーを先取りできる、そしてリーダーになったら競合ブランドと戦うのではなく競合カテゴリーと戦うべきである。競合ブランドの存在はカテゴリーのパイの拡大に有益。

9. 名前の法則:「結局のところブランドとは名前である」 ブランドが短期的に生き残るためにはユニークなアイディアやコンセプトが必要になるが、長期的に残るのはブランド名。しかし、多くの企業はブランド名という重要資産を捨て、ライン延長方式による総称的な名前を選ぼうとする。今日ではあらゆる商品がコモディティ化して、ブランド名がなければその違いが分からない。

10. ライン延長の法則:「ブランドを破壊する最も簡単な方法は、あらゆる商品にそのブランド名をつけること」 あらゆる商品に同じブランド名をつけるというライン延長の悪例は数多くの業界で見受けられる。ライン延長を行う場合には、既存顧客がどう思うかを考えるべき。

11. 協調の法則:「カテゴリーを築くには競合ブランドの参入を歓迎すべき」 カテゴリー内の選択肢は需要を喚起する。ライバルと言う選択肢がなければ顧客はそのカテゴリーに懐疑的になる。だからカテゴリーのリーダーは市場シェアを根こそぎ奪おうとするべきではない。またブランドそれぞれが独自の絞り込みを行うことがカテゴリーの幅をさらに広げることになる。二大ブランドの存在、類似業者の集積といったカテゴリー内での健全な競争は多くの顧客をもたらすことになる。ライバルとの協調と競争のバランスが大切。

12. ジェネリックの法則:「失敗に至る一番の近道はブランドに総称的な名前をつけること」 多くの企業が大きくて広がりのある総称的な名前を選んで失敗している。総称的な名前を持つ成功企業は一番手であることで成功したのでありマネをするべきではない。総称的な名前はライン延長の落とし穴にはまる原因ともなる。

13. 企業の法則:「ブランドと企業には大きな違いがある」 多くの場合、ブランド名を企業名より重視すべき。企業はブランドを生み出す組織体であってブランドそのものではない。ベストなブランディング戦略は企業名をブランド名として使う方法。そうでなければブランド名を前面に出して社名は小さく出すこと。企業名はあくまでも脇役として考える。

14. サブブランドの法則:「ブランドがサブブランドの導入で破壊される場合がある」 典型的なライン延長戦略にもとづいてサブブランドを導入するのは誤り。多くの場合、顧客の頭の中にあるブランドのイメージと一致しない提案を行うことになる。ブランドには典型的な顧客像というべきものがあり、サブブランドはそれを正反対に導こうとする考え方。市場に後押しされないブランティングのコンセプトは何の成果も生まない。

15. 兄弟の法則:「第二のブランドを発信させるには時と場所を選ばなければならない」 第二のブランド戦略を誤ると既存ブランドのパワーがそがれることもある。第二のブランドと既存ブランド同士が競争し合うようなことにならないよう強い管理統制が必要。兄弟ブラントは共通の商品分野に焦点を合わせるがそれぞれ一つの特性を選んでセグメント化し、ブランド間に厳格な区分けをしなければならない。そして似通っていないブランド名を付けることも重要。兄弟ブランドを作るということは新カテゴリーを創出するということ。

16. 形状の法則:「ブランドのロゴタイプは目にフィットするようにデザインする」 ロゴは見やすく読みやすいことが重要。多くの企業がロゴの役割を過大評価している。多くの努力は顧客の頭の中でブランドのイメージを作りだすことに成功していない。効果的な証票となる単純なシンボルは数えるほどしかない。

17. 色調の法則:「競合企業と反対の色を使うべき」 色について第一の選択権はリーダー企業にある。リーダーはそのカテゴリーに最も似つかわしい色を選ぶが、その他の企業はそれとは対極の色を選ぶべき。

18. 国境の法則:「ブランドに国境はない」 成長するには危険を冒してもライン拡張策を取るしかないという考え方は間違い。グローバルブランドの構築が正解となる。国境を超えるとブランドの価値が高まることが多い。グローバルブランドになるには一番手であることと商品イメージが自国の評価と合致していることが必要。

19. 一貫性の法則:「ブランドは一夜では築けない。成功は何十年単位で測定される」 一番頻繁に破られるのが一貫性の原則。ブランドはそれが何かを表すものでない限り人々の頭の中に入っていかない。ブランドは同じところにとどまるべきもの。一貫性の欠如はブランドの破壊をもたらす。企業は自らのブランドの境界線をはっきりと限定すべき。

20. 変更の法則:「ブランドは細心の注意を払えば変更できる場合もある」 変更の法則はブランディングの法則の最大の例外。ブランドが弱体でイメージが浸透していない場合、価格帯を下げて利益を確保する場合、うまみの少ない市場で変化の予兆がある場合などは変更が有益なこともある。ただし、変更には細心の注意が必要で顧客の頭の中をしっかりと理解しなければならない。

21. 寿命の法則:「永遠の命を持つブランドは存在しない」 あらゆるブランドがいつか死滅する。滅びつつあるブランドにではなく将来性のある新たなブランドに投資すべき。

22. 特異性の法則:「ブランドの最も重要な側面は一つの物を追求するひたむきさ」 特異性を喪失するとブランドは弱体化する。ブランドとは顧客の頭の中に企業が刷りこんだただ一つのアイディアないしはコンセプト。それはとても単純でありながらやっかいなものでもある。

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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

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