浅沼宏和ブログ

2020.12.13更新

ハイブリッドワークライフのコンセプトにはドラッカーのマネジメント論が大きく影響しています。そこでドラッカーの考える「働き方」について解説します。
ポイントの一つとなるのが「人的資源管理」というコンセプトです。

労務管理の世界では1950年代に「人的資源管理」というコンセプトが登場しました。そして、ほぼ同時期にドラッカーは同様のコンセプトを打ち出しています。したがって、人的資源管理は必ずしもドラッカーのマネジメント論の専売特許ではありません。

それまでの人事労務管理と人的資源管理の間には大きな相違点があります。労務管理は外部からの統制、ルール順守、集団的といった特徴を持つ管理法で、どちらかというと短期的・受動的でありコスト重視の管理を志向します。

これに対し、人的資源管理では、労働者の自己統制が求められ、個人主義的でありルールよりも当人のコミットメントを重視します。その結果、人的資源管理には長期的な戦略性が求められることとなります。コストを最小化する視点ではなく、いかにして成果を最大化するかという視点を重んじるのです。

人的資源管理では労働者の主体性を重んじ、組織の側は彼らのスキルが最大限に発揮されるような事業目標の設定が求められることになります。労使の利害が一致した目標によって組織にとっても個人にとっても最大の成果が上がることを目指すのです。

ドラッカーは名著「現代の経営」(1954)において、人的資源という言葉は、「人的」に重点を置くか、「資源」に重点を置くかで理解が異なってくると述べています。そして、「人的」という場合、人の固有能力である、「調整・判断・想像」の意義が大きいと言います。その上で、こうした人間的な能力を発揮するかしないかのイニシアチブは本人が握っていると考えたのです。

つまり、人的資源の最大の特徴である調整・判断・想像をつかさどる個人の人格的部分に焦点を当てたのです。特に、「働くか働かないかの判断さえも本人が支配力を持っている」という考えは重要です。そして、人的資源の開発は外部的な刺激で促進されるのではなく、成長は内部から起きると考えたのです。これは現代では「内発的動機づけ」と呼ばれる視点と同じです。

こうした特徴、自らの能力の利用についての支配力を持つ人的資源を生かすには組織の経営者の側での動機づけが重要な意味を持つと指摘したのです。ただし、ここでの動機づけは従業員の満足によるのではないといいます。ドラッカーは従業員満足が「働く」ことを自らに命じることにはつながらないというのです。

では、どのような視点から人的資源の支配者である労働者の動機づけを行うのでしょうか。
それは、「自由」に関係してくると言います。次回は、この点について解説したいと思います。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

  • 各種お問い合わせ
  • 053-473-4111