浅沼宏和ブログ

2020.12.08更新

リンダ・グラットンの「ライフシフト」では人生100年時代にはライフステージが多様化(マルチステージ化)することがリスクであるとの説明がなされています。そして、長い人生の間に度々訪れるであろう変化に対応するための変身資産の重要性も指摘されました。変身資産とは、アイデンティティ、情報ネットワーク、自己認識です。これらの資産は現状に過剰適応することでリスクが高まることへの備えということになります。

こうした中で「生涯学習」という言葉が重要な意味を持つようになってきます。そもそも「学習」とは新たな思考スタイル・行動様式を身につけることを意味します。変化に対応するためには継続的な「学習」が不可欠です。それが生涯にわたって必要になるというコンセプトが「生涯学習」です。

一つのことを極めることも大切ですが、人生100年時代においては多様な学習が必要になります。例えば、ライフステージで考えてみると生まれてから職業につくまでは家庭教育、学校教育による学習が多くを占めるでしょう。それは社会で生き抜いていくための基礎的な能力を身につける時期であると言えます。そして、職に就くと仕事上の成果をあげるために様々なことを学び身につけていきます。

最初は右も左もわからずに上司や先輩に叱られていた若者が数年もたつと立派に仕事の場で成果を収めるようになるのです。従来の仕事の学びの常識では、そうしてできた基礎の延長戦上で学びを続けていくというものでした。要するに「経験」を積むということです。ところが、ライフシフトの時代にあってはこの「経験」が変化を妨げるリスクとなるのです。

では、どうしたらこの「経験」というリスクに対処できるのでしょうか。それが現代的な意味での「生涯学習」という視点なのです。ドラッカーは19世紀までの社会と現代との大きな違いの一つとして「19世紀までは18歳までに身につけた技能で一生食べていくことができた。だが、現代ではそうはいかない」と言った趣旨のことを述べて、生涯学習の重要性をいち早く主張していました。

ドラッカーは社会を生き抜くには成果をあげること、つまり成果能力を持つことが大事であると考えていましたが、その成果能力は油断すると失われてしまうものであると考えていました。なぜなら、成果能力とは様々な社会的前提条件によって価値を認められる能力だからです。電卓が登場すればソロバンの価値が薄れ、エクセルが登場すれば電卓の価値が薄れる時代にソロバンの技能しか持たない人がどうなるかは一目瞭然でしょう。そして、現在ではPCが扱えること自体が当たり前の時代になっているのです。こうした状況で次に身につけるべき能力は何になるのでしょうか。

生涯学習にはこうした問いに自ら答え、自ら学ぶ対象を選ぶというステップが必要になります。「これからの時代には英語、会計、ITスキルが欠かせない」という主張が数年前にもてはやされました。それは今でも当たり前なのでしょうか。また、それらをどのレベルで身につければよいのでしょうか。地方の中小企業にいる人にとっても”当たり前”なのでしょうか。

こうした一般的な主張は個人個人の生涯学習の目標を決めるにはあまり役に立ちません。それぞれの人が置かれている状況は千差万別だからです。今、何を学ぶべきかは自ら考えなければなりません。今現在の仕事で成果をあげるスキルを増やす必要もあるでしょう。将来やってみたい仕事に向かって今からコツコツ身につけるべきものもあるでしょう。現在と未来の両方の視点で学びを計画することはとても大切なのです。しかし、それだけでは足りません。

今日の仕事のための学び、明日の仕事のための学び、つまり現在と未来の学びという二区分で生涯学習を考えるのは少しリスクが高いように思われます。なぜなら、これから世の中がどう変化するかは予測できないからです。現代はVUCAの時代(Volatility,Uncertainty,Complexity,Ambiguity) といわれ、未来が見通せない時代となっています。

こうした時代に合って最大のリスクの一つが「学ばないこと」なのです。そして、先の見えない時代を生き抜くためには多様な視点が必要になるのです。学びを通じて自分の価値観を変化させていくことも生涯にわたる課題となるのです。生涯学習は社会がどのように変化しても生き抜く力を身につけるという長期的かつ多様な学びの事なのです。

ハイブリッドワークライフの考え方としては、プライベートにおける学びの充実が大事になります。単なる娯楽や気休めに時間を使うのではなく、何かを学ぶこと、何かにチャレンジすることが大切になります。もちろん、色々な人との交際の中からの学びもあるでしょう。しかし、前向きではない人との交際からは十分な学びが得られません。

これに対し、前向きで何かにチャレンジしている人の話を聞くと多様な学びが得られます。最終的に自分の価値観に変化をもたらすもの、全く考えたことのない視点をもたらすもの、自分の行動を変化させるもの等が生涯学習の対象となります。必ずしも本を読んだりセミナーに通うことだけが学習ということではありません。しかし、真剣な学びの部分があることは必須となります。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

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