浅沼宏和ブログ

2020.12.04更新

現在、多くの業界が成熟期を迎えています。成熟業界に明確な定義があるわけではありません。しかし、成長率が緩やかに低下しつつある業界を成熟業界と呼ぶことが多いでしょう。また、マイナス成長に陥った業界を衰退業界と呼ぶこともあります。成熟業界、衰退業界ではより明確なマネジメントが必要になります。成熟期に移行すると業界は苦難の時期に突入します。経営環境は激変し、経営戦略にも変更を迫られるようになるのです。

成熟業界では競争が激化します。顧客はより品質と価格に厳しくなります。新規参入、業態間競争など競争相手も増えていきます。その一方、売上低下による過剰設備(過剰人員)の問題も起きやすくなります。新製品を市場に投入することも難しくなる場合もあります。製造・マーケティング・開発などあらゆる仕事のやり方が変わる可能性もあります。すると新たな資金投入や取り組みが必要になったりするのです。

こうした厳しい状況にある成熟業界(衰退業界)の経営の原則は何でしょうか。それは「生き残り」を目指すことです。例えば、市場規模が横ばいであるにもかかわらず、新規参入が続いているとしたらどうなるでしょうか。一事業者当たりの売上高はどんどん下がっていくのです。すると、最終的に事業を維持できなくなる事業者が続出するのです。こうした市場では弱い事業者がどんどん淘汰され、最終的に生き残った事業者で市場を分け合うことになるでしょう。

仮に、ある業界では10年後に30%の事業者が廃業すると予想されるとしましょう。これをイス取りゲームに例えると、10席あるイスが最終的に7席まで減るゲームを行っているということです。実は多くの事業者がこうしたイス取りゲームに直面しているのです。ですから、成熟業界(衰退業界)の事業者には「10年後に生き残っている70%に入る」という目標設定が必要なのです。そうでなければ、撤退戦略、つまり廃業や事業譲渡などを考える必要があるのです。こうした明確な意思決定がなければズルズルと業績を落とし続け、生き残ることも撤退することも難しくなるでしょう。

では具体的にどのように行動したらよいのでしょうか。ここでポイントになるのが「独自性」と「差別化」です。同業者同士が同じような行動をして競い合うことはお互いの力を消耗させるだけです。その典型的な失敗が“安売り競争”です。中小・零細事業者にとって安売り競争ほどダメージになるものはありません。それを避けるには、顧客から見て意味のある違い(独自性)を生み出し、しかも、それによって利益を得る必要があるのです(差別化)。

しかし、独自性と差別化は一朝一夕では実現できません。長い間に培った強みが必要だからです。ところが、多くの事業者は新しい強みを身につけるための取り組みを怠っています。日々の仕事に追われ、未来を切り開くための取り組みを行っていないことが多いのです。「このままではいけない」と思いつつも、新しい目標を設定できず時間を浪費し続けている事業者がたくさんいるのです。

何が正しい方向なのかを事前に知ることはできません。しかし、新しい取り組みをしないこと自体は間違いです。未来を作り出すための貴重な時間を浪費することになるからです。正解が分からなくても行動する必要があるのです。こうした場合、仮の目的を設定して行動する必要があります。そして、試行錯誤を繰り返しながら自分なりの正解を導き出す必要があるのです。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

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