浅沼宏和ブログ

2017.08.07更新

第7章 格差と集中 -予備的な見通し

1. 二つの大戦とそれに続く公共政策が20世紀における格差縮小に中心的役割を果たした。しかし、1970年代、80年代以降、格差が再び急速に拡大したが、そこには国ごとに大きな違いがある。

2. 19世紀フランスにおける所得と富の格差は極めて大きかった。

3. 第二次大戦後の数十年では、相続財産がその重要性をほとんど失い、歴史上でおそらく初めて労働と勤勉がトップに上り詰めるための最も確実なルートとなった。

4. 所得は常に労働所得と資本所得の和となる。所得格差はこの二要素を合計した結果生まれる。この二要素が不平等に分配されればそれだけ全体の格差が大きくなる。

5. 大きな財産を持つ個人が中小規模の財産を持つ人々よりも何らかの理由で高い収益率を得られるなら、資本所得の格差が資本そのものの格差よりも大きくなる。

6. 資本所得格差の場合、最も重要な過程として挙がるのは、貯蓄と投資活動、贈与と相続を管理する法律、不動産と金融市場の働き。

7. 労働所得分布の上位10%が全労働所得の25―30%を稼ぐ。資本所得分布の上位10%が常に全ての富の50%以上を所有する。

8. 資本に関する格差は常に極端だ。

9. 短期間に賃金が大きく変動する世界だと富を蓄積する主な理由は「予防」(所得への負のショックに備えた備蓄)。この場合、富の格差は賃金格差より小さくなる。富の格差は恒久的な賃金所得格差と同程度となり、瞬間的な賃金格差よりはかなり小さくなる。しかし、これは実世界にはあてはまらない。富の格差は常に労働所得格差よりも大きい。

10. ライフサイクル貯蓄(老後の蓄え等)では現実に見られる資本所有権の極端な集中は説明できない。世代間闘争が階級闘争にとってかわったわけでもない。極度の資本集中は主に相続財産の重要性とその累積効果で説明できる。

11. 1789年のフランスだろうと2011年の米国だろうと、どんな社会でもトップ百分位は社会の様相と政治経済秩序の両方に大きな影響を与え得る規模を持つグループ。

12. 資本所有の分配はどこでも極端に不平等。富が最も平等に分配されている社会では、最も富裕な10%が国富の50%を持っている。2010年代初期の現在では、ほとんどのヨーロッパ諸国では、最も裕福な10%が国富のおよそ60%を所有している。

13. 最も富裕な10%は社会の平均財産の6倍を所有していることになる。

14. トップ十分位のほとんど全員が持家だが、不動産の重要性は富の階層をあがると激減する。住宅は中流階級と小金持ちに人気の投資だが、本当の富は常に金融、事業資産が主体。

15. 真の「世襲中流階級」の台頭は20世紀の先進国における富の分配で重要な構造変化だった。

16. 20世紀初頭では中流階級は存在しなかった。国民の大半が実質的に何も所有しない7一方、社会資産の大半を少数が所有していた。

17. 資産を持つ中流階級の台頭に伴い、上位百分位の富の占有率は半分以下に急減。20世紀初頭に50%以上あったものが、21世紀初めには20-25%にまで減少した。

18. 総所得、つまり労働と資本による所得合計の格差についていえば、トップ十分位が国富の50%を得ている(約20%をトップ百分位が得る)。これはベル・エポック期、アンシャン・レジーム期のフランスやイギリス、現在の米国に当てはまる。

19. 富の集中がさらに大きい社会はありうるか?たぶんムリ。もしもトップ十分位が毎年総生産の90%を独占すると、おそらく革命が起きる。

20. 重要なのは格差の大きさそのものではなく、格差が正当化されるかということ。

21. 「超世襲社会」では、総所得のヒエラルキーは大きな資本所得、とりわけ相続財産による所得に支配されている。

22. 高水準の格差が達成される二つ目の方法は比較的新しい。それはここ数十年、主に米国で生み出された。総所得の極端な格差は「超能力主義社会」の結果だ。これを「スーパースターの社会」と呼んでも良い。

23. 二種類の格差は共存可能。一人の人間がスーパー経営者と不労所得生活者を兼ねていけない理由などない。

 

 

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

  • 各種お問い合わせ
  • 053-473-4111