浅沼宏和ブログ

2017.03.30更新

遠州地方の進取の気性に富んだ起業家精神を「やらまいか精神」といいます。
最近、地域の経済基盤が沈下傾向にあるため、「やらまいか精神を発揮しなければ!」とよく言われるようになりました。
この言葉は1980年に刊行された梶原一明氏の「浜松商法の発想」という本で初めて使われた言葉だと思われます。
梶原氏は他地域の方なので、「やらまいか」という言葉を「すでに実行した」という意味で理解されたようですが、それは間違いです。
「やらまいか」は「一緒にやろうよ」という誘いの言葉で、決して「思いついたら断固実行する」という意味ではありません。
本当であれば間違った表現なので改めるべきと思いますが、すでに広範囲で受け入れられてしまっていますから、梶原氏が解説する「やらまいか精神」を著書から抜き書きしてみました。

1. 開放的でバイタリティに富んでいる。
2. 独特の技術・販売ノウハウを編み出している。
3. 逆境に強い。
4. 超ドライな気質。肉親の関係をあまりビジネスに持ち込まない。
5. 経営を大転換することは当たり前。
6. 東京を素通りしていきなり世界に羽ばたく。
7. 横の連携・協調、群れを成すという日本人的特徴が薄い。
8. 商社無用の輸出戦略。
9. 各社の自立心が強く、地元の財界を形成しない。
10. 他地域の名産品を容易に取り入れ同化させる。
11. 機を見るに敏。
12. 産業の歴史は浅い。
13. よそ者を平気で受け入れる。よそ者が成功するパターンが多い。
14. 家康の人気が低い。
15. 共産圏相手の商売は苦手。
16. 自己主張が強烈で協調性に欠ける。
17. 独特の文化・芸能がない。“通り過ぎ”の文化。
18. 楽器の街だが音楽の街ではない。
19. 経済の主役が繊維から楽器・オートバイに移行して浜松商法の花が開いた。
20. 楽器・オートバイの市場の成長期の中での企業淘汰の激しい戦いが浜松企業を強くした。
21. 静岡県人会の活動は不活発。
22. 親会社に対する忠誠心はない。
23. 知識欲は強く、有力書店が多い。
24. バクチ好きが多い。
25. 権力への反骨心が強く、ホラも吹くが、やることは堅実。
26. ドライな土地柄のため地元の金融機関が育たない。
27. 教室商法と養子経営が特徴。
28. きめ細かい販売網作りが得意で商社が要らない。
29. 組立産業が強く、“買いたたく”のがうまい。
30. 技術と商法の発明が浜松企業の基盤。
31. 技術発明の能力があればよそ者として差別されない。
32. 「必要だからつくる」職人気質。
33. 思い付きではなく必然性。
34. 浜松に背広は似合わない。


こうして見ると「やらまいか精神」という言葉には梶原氏の主観が色濃く反映していることが分かります。しかも原則のうち何割かは現状には当てはまりませんね。
浜松の活性化を考える場合、むやみに「やらまいか精神を発揮しよう」という言い方をするのですが、この言葉は注意して使う必要があると思います。

「浜松には昔から『やらまいか精神』があるのだから、それを発揮しなければ」という視点で地域活性化を考えると不必要に人を惑わせることになると思います。「当たり前」が本当に「当たり前」かを十分検討しなければいけないと思います。

投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

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