2023.06.20更新

            

  ドラッカーは成果を上げるコツを一つだけ挙げるとすれば「それは集中である」と述べています。集中とは一つのことに意識を向けて取り組むことです。集中することで行動、取り組みのレベルが上がり成果が大きくなります。

  集中のポイントは目的を一つに絞ることです。やるべきことを明確にし、そこに意識を向けることで集中力が高まります。大切なことは目的を意識的に選ぶということです。意識的に目的を設定することはモチベーションをあげる必要条件でもあります。

  マルチタスク(複数の仕事を同時に並行して処理すること)は集中とは真逆の状態です。人間の意識は二つに分けることはできません。多くの仕事を同時にうまくこなしているように見える人も、実際には一つの仕事を手早く片付け、次の仕事に素早く取り掛かっているだけなのです。

   意識的に目的を選んで取り組むと「よい集中」状態に入りやすくなります。これに対し、状況の圧力によって起きる集中は「悪い集中」です。たとえば、トラブルが起きた時などで発揮される集中力は典型的な「悪い集中」の状態です。

  集中すると視野が狭くなります。焦点を絞った領域に意識を向けるわけですから、それ以外のことについては注意が散漫になるのです。すると、思わぬところから更なるトラブルが生じるのです。「よい集中」のためには、思わぬ事故が起きないよう十分に準備する必要があります。

  「よい集中」のためには、日常的に仕事の目的を意識し十分に段取りを組むことが大切です。よく「仕事に追われる」といいますが、それは状況の流れに身を任せて起きた「悪い集中」の状態です。「今日はなんだか忙しかったけれど、何をしていたのかよく思い出せない」といった状態は「悪い集中」の状態なのです。こうした状態では大きな成果はなかなか得られません。

 

☆「集中」に関する P.F.ドラッカーの名言

  1.  成果をあげる秘訣は集中。

  2.  成果をあげる人は最も重要なことから始め、一度に一つのことしかしない。

  3.  忙しさに身を任せるのではなく、成果をあげることに力を入れる。

  4.  ひとつに集中するほど実際にやれる仕事は多くなる。

  5.  集中すると時間が少なくて済む。成果をあげない人ほど長時間働く。

  6.  古いものを計画的に廃棄するが新しいことを進める唯一の方法。

  7.  優先順位の決定はやさしい。難しいのは劣後順位の決定。

  8.  状況に流されて優先順位を決めてはいけない。


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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2023.05.12更新

            

 米国の諜報機関 CIA の前身組織(OSS)が第二次世界大戦中に敵国の組織を内部から機能不全に陥らせる方法をマニュアル化していました。現在、そのマニュアルは CIA の HPで全文が公開されています。この通りにすれば組織が機能不全に陥るのであれば、その逆を行えば組織の成果が大きくなるわけです。

  ・常に文書による指示を要求せよ。

  ・誤解を招きやすい指示を出せ。

  ・長時間議論せよ。

  ・出来る限り不備を指摘せよ。

  ・完全に準備ができるまで実行に移すな。

  ・高性能の道具を要求せよ。道具が悪ければ良い結果が得られないと警告せよ。

  ・常に些細な仕事からとりかかれ。重要な仕事は後回しにせよ。

  ・些細なことにも高い完成度を要求せよ。わずかな間違いも繰り返し修正させよ。

  ・重要な決定を行う際には会議を開け。

  ・あらゆる物事を委員会で討議せよ。委員会のメンバーはできる限り大人数にせよ。

  ・書類を増やせ。

  ・決済手続きを多重化せよ。すべての決裁者が承認するまで、仕事を進めるな。

  ・すべての規則を隅々まで厳格に適用せよ。柔軟な対応を認めるな。

  ・議事録や連絡用文書、決議書などにおいて細かい言葉遣いにこだわれ

  ・以前の会議で決まったことを再び持ち出し、改めて問い直せ。

  ・「警告」し、他の人々に「理性的」になることを求め、早急な決断を避けるよう主張せよ。

  ・あらゆる決断の妥当性を何度も問え。権限や組織のポリシーとの相反を問題にせよ。

 

  このマニュアルが示しているのは、目的ではなく手段を、全体ではなく細部を、内容ではなく形式を重視することで組織は機能不全に陥るということです。逆に言えば、成果の上がる組織は書類や会議が少なく、実行の着手が早く、些細な間違いを気にせず真の目的に集中しているということになります。


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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2023.04.14更新

            

  心理学者の A.アドラーが提起した「劣等コンプレックス」という概念があります。“劣等感”に似ていますが少し違います。健全な劣等感の持ち主は、勉強やスポーツなどでライバルに負けても「よし!次はがんばるぞ」と前向きに行動することができます。

  ところが、一歩を踏み出す勇気が持てず、「努力で状況は変えられる」と信じることができない人がたくさんいます。カベに突き当たると「どうせ自分なんか」とすぐあきらめてしまうのです。チャレンジや前向きな行動をあえて避けようとするのです。アドラーは、その原因が劣等コンプレックスにあると考えました。

  チャレンジしない人、行動しない人は“言い訳”探しの名人です。「〇〇だから行動しないんだ」とすぐにできない理由、やらない理由を思いつきます。そして「〇〇という原因さえなければ自分は有能で価値があるのだ」と主張するのです。この状態が劣等コンプレックスです。健全な劣等感と劣等コンプレックスとの違いは前向きな行動があるかないかです。

  昔、「オレ、まだ本気出してないから」という映画がありましたが、この言葉は典型的な劣等コンプレックスのセリフです。劣等コンプレックスの持ち主は常に行動しない理由を見つけ、新しいチャレンジを避けるのです。なぜでしょうか。

  劣等コンプレックスの持ち主は常に言い訳をして行動しません。行動しなければ失敗することもありません。失敗しなければ可能性の中に生きることができるのです。「自分は〇〇なので、行動していないだけなのだ」と自分に納得させているのです。なにも行動しなければ人は可能性の世界(夢の世界)に生きることができるというわけです。

  もちろん、行動しないわけですから何もいいことが起きません。自分でも薄々と今がよくない状態であることには気づいています。だからこそ「オレ、まだ本気出してないから」と強気のスタイルをとる必要があるのです。虚勢を張ることで心のバランスを取ろうとするのです。

  さらに消極的な場合もあります。「お金持ちの家に生まれなかったから‥」「もっとカッコよかったら(キレイだったら)」「もっと頭がよかったら」という言い訳を見つけて努力や前向きの行動は無意味だと自分自身を説得し続ける人です。業績悪化を「景気が悪いから」「取引先が理不尽だから」という経営者も同じ です。失敗への不安から行動しない人は消極的に不幸な人生を選択しているのです。

  アドラーはライフスタイルを変えれば結果を変えることができると主張しています。「ライフスタイル」とは自身の物の見方、出来事に対する反応の仕方のことです。ライフスタイルはこれまでの人生で自分が身に着けた生き方のクセです。「自分を変える」とは「ライフスタイルを変える」ことなのです。

  ライフスタイルは選びなおすことができます。「不幸」をもたらすライフスタイルを選んだ人もライフスタイルを選びなおすことができます。しかし、それには自分の劣等コンプレックスに向き合う勇気が必要です。心理学者の岸見一郎氏はそれを「幸せになる勇気」と名付けました。アドラーは、「劣等感を言い訳にして人生から逃げ出す弱虫は多い。しかし、劣等感をバネに偉業を成し遂げた者も数知れない」と述べています。劣等コンプレックスを知ることはライフスタイルを変える第一歩です。


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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2023.03.29更新

 

1. 雑草は厳しい自然界を生き抜いてきた勝者。雑草の生存戦略のポイントは「戦いを避ける」こと。

2. 良い環境は競争率が高い。予測不能・不安定・複雑な環境にこそチャンスがある。

3. 単純なルールでは勝つのは強者。圧倒的な力がないならばルールは複雑なほうが良い。

4. 安定した条件では強者が勝つ。不安定な条件なら誰にでも勝者になるチャンスがある。

5. ニッチは生物学の用語。一つのニッチには一つの種しか棲むことができない。

6. 強者も弱者もニッチを持つ。強者は大きなニッチで、弱者は小さなニッチで生き残る。

7. 弱い生物は条件を小さく、細かくし、細分化されたニッチのナンバーワンを目指す。

8. 生き残るにはどんなに小さくてもニッチのナンバーワンにならねばならない。

9. 多様な雑草同士は、条件を細分化し、生活空間のニッチを分け合っている。

10. どんな小さなことでも良い。他者に対する優位性を見つけ、そこに勝つ道筋を見い出す。

11. ニッチは自分より強いライバルが入り込めないカテゴリーであることが望ましい。

12. 弱者は大きくなるという発想ではダメ。大きな相手とは小ささで勝負する。

13. 小さい範囲では小さい方が有利。小さな土俵から出なければ何も恐れることはない。

14. 弱者にとってはスピードこそが競争力。変化を迅速に捉えて対応し、チャンスに変える。

15. 弱者の成功に一番重要なのはタイミング。雑草の種子はじっと発芽のタイミングを待つ。

16. 幸運とはチャンスに対して準備ができていること。チャンスは予兆なく現れる。

17. チャンスを捉えれば、後は迷うことなくスピード勝負。一度芽を出したらもう土の中には帰れない。

18. 不確実な環境では、あらゆる可能性に賭けてたくさん小さな種をまく。

19. 変化が大きい環境ほど一つのサイクルは短い方が良い。仕事のサイクル、成功のサイズを小さくする。

20. 変化のある条件では、時間をかければかけるほどリスクが高い。

21. 大きな目標を掲げて長期戦を挑むのではなく、小さな目標を掲げて短期決戦を挑む。

22. チャレンジが小さければ失敗してもリスクは小さい。

23. 一つの正解を求めるのは危険。複数のオプションを用意し、状況によって使い分ける。

24. 根が成長するのは条件に恵まれない苦しい時。地面の下に伸びることも立派な成長。

     ※稲垣稲垣栄洋「競争しない『競争戦略』」より ‥雑草に学ぶ不確実・不安定な環境での生き残り術 

 


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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2023.02.13更新

1 時間管理

 ➢ 成果をあげる者は時間からスタートする。
 ➢ 時間は常に赤字である。
 ➢ 時間こそが普遍的制約要因。
 ➢ 成果の限界は時間で決まる。
 ➢ 成果をあげるにはまとまった時間が必要。
 ➢ 人間関係が絡むと時間はさらに必要。
 ➢ 創造と変革には膨大な時間が必要。
 ➢ 時間の浪費と活用の違いは成果・業績に表れる。

 

2 貢献意識

 ➢ 成果をあげるには貢献を考える。責任を中心に据える。
 ➢ ほとんどの人は成果ではなく努力に焦点を合わせている。
 ➢ 貢献に焦点を合わせると組織全体の成果に注意が向く。
 ➢ 貢献を問うことは可能性を追求すること。
 ➢ 貢献を自問しないと間違った目標を設定してしまう。
 ➢ 成功者はみな貢献に焦点を当てている。
 ➢ 生産的であることが良い人間関係の唯一の定義。
 ➢ 貢献を考えることでコミュニケーション、チームワークが可能になる。

 

3 強みを生かす

 ➢ 強みを生かすことは成果を要求することである。
 ➢ できることからスタートする。
 ➢ 他の人には難しいが、自分には簡単なことを考える。
 ➢ 大きな強みを持つ人は、ほとんど常に大きな弱みを持つ。
 ➢ 人の弱みを克服できないが意味のないものにはできる。
 ➢ 弱みからは何も生まれない。
 ➢ 部下が成果をあげるカギは上司の強みを生かすことにある。
 ➢ 強みを生かすことは姿勢である。姿勢は行動で変えられる 。

 

4 集中

 ➢ 成果をあげる秘訣は集中。
 ➢ 成果をあげる人は最も重要なことから始め、一度に一つのことしかしない。
 ➢ 忙しさに身を任せず 、成果をあげることに力を入れる。
 ➢ 一つに集中するほど実際にやれる仕事は多くなる。
 ➢ 成果のない人ほど長時間働く。
 ➢ 何かをやめることが新しいことを進める唯一の方法。
 ➢ 優先順位の決定はやさしい。難しいのは劣後順位決定。
 ➢ 状況に流されて優先順位を決めてはいけない。

 

5 意思決定

 ➢ 個々の問題ではなく根本的なことについて考える。
 ➢ 常に「問題は一般的」という前提に立つ。
 ➢ 行動する人の能力に見合った意思決定をする。
 ➢ 最善の意思決定にも間違っている可能性がある。
 ➢ 正しい意思決定も、やがては陳腐化する。
 ➢ 意思決定とは判断。いくつかの選択肢からの選択。
 ➢ 満場一致では決められない。意見の衝突、異なる意見・判断が必要。
 ➢ 成果をあげる人はまず問題の理解に関心を持つ。

 


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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2023.01.19更新

 最近、「人的資本経営」という言葉をよく耳にします。人的資本とは、狭く見れば企業に所属する人たちのスキルや専門知識の総体のことです。広く見ればそうした人たちのチームワーク、それを支える企業の仕組みや企業風土なども含めることができます。

 1990年代ぐらいから、企業価値には決算書(財務諸表)には現れないものがたくさんあると考えられるようになりました。当時、「マイクロソフトの決算書には創業者のビル・ゲイツの価値が計上されていない」という冗談がよく使われていました。企業の価値を正しく評価するには、決算書には出てこない、ブランド、のれん(営業権)、開発力などの評価が欠かせないと考えられるようになっていたのです。人的資本もその一つというわけです。

 しかし、人的資本経営が最近、急に注目されるようになったきっかけがあります。国際標準化機構(いわゆるISO)が 2018年12月に人的資本に関する情報開示のガイドラインISO30414を公表したのです。その後、2020年8月には米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対して求める要求事項に「人的資本の情報開示」を追加し、義務化しました。こうして人的資本を適切に開示することは上場企業にとって義務となったのです。

 このような欧米の流れに追随する形で、日本国内では経済産業省が2020年1月から「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」を開催し、2020年9月に経営戦略に連動する人材戦略の必要性を説いた「人材版伊藤レポート」を発表しました。そして、2021年6月には上場企業に適用されるコーポレートガバナンス・コードに「人的資本に関する情報開示」の項目が追加されました。 現在、多くの企業がその対応に追われています。

 「伊藤レポート」は、会計学会の大御所・一橋大の伊藤邦雄先生が中心となってまとめられたものです。こうした動きの背後にあるのはESG投資の重要性の高まりです。ESG投資とは、年金基金などの機関投資家が超長期の目線で投資を行う際に、E(environment:環境)、S(social:社会)、G(governance:統治) に着目して意思決定を行 う投資のあり方です。ESG投資は超長期における投資リスクが低いと言われています。こうした動向が企業の考え方、行動を変えたのです。

 人的資本のように決算書からは直接読み取れない情報を「非財務情報」といいます。人的資本の開示は非財務情報開示の一種です。最近では自社が気候変動から受ける影響、逆に気候変動に与える影響なども非財務情報として開示が義務付けられるようにな っています。会計の世界では金銭換算しにくいものの重要性が急速に高まっているのです。

 人的資本経営では何を行うべきでしょうか?この質問には正解はありません。しかし、社会のさまざまな人がその企業の説明を聞いて「立派な会社だ」と思ってもらうことが大切です。そのためには会社による説明が社会的に妥当なものでなければなりません。

 企業経営の場合、自社の戦略と連動させること、理想と現実の差を明らかにし計画すること、組織文化に定着させることが重要とされています。この考え方は人的資本経営に限らず、気候変動への対応等CSRに関連する項目すべてに当てはまります。

 

 


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2022.12.10更新

 仕事柄、 M&Aの相談を受けたり、交渉の場に臨んだりすることが時々あります。10年ほど前のことになりますが、ある企業が新分野への進出を目論み、企業買収を行おうとしていました。超大手ファンドから持ち込まれた案件でした。私はその企業から買収価格に関する助言を求められました。

 買収対象の企業は特殊な製品を製造する中堅部品メーカーで、有名企業を中心に数百社と取引を行っていました。買収側企業にとって、多数の顧客とエンジニアを抱えている点が魅力でした。買収側企業の財務部長は、買収価格は26~28 億円が妥当」と考えていました。しかし、私は「上限は16億円、13億円以下で買えればなかなかお得」と意見を述べました。なぜ同じ会社に対する価格評価にこれほど差がついたのでしょうか。

 会社の価値を正確に評価する科学的な方法はありません。さらに、会社の価値は買収側の企業の条件・事情によっても変わってきます。A 社にとっては30 億円の価値があってもB社にとっては無価値かもしれないのです。会社の値段は相対的なものなのです。何に着目するか、言い換えればどんな“基準”、“考え方”を採用するかによって大きな差がつきます。

 といっても、会社の値段を決める一般的な方法はいくつかあります。一つは、決算書の貸借対照表の純資産の部の金額を元に調整する方法です。二つ目は、過去の売買事例に基づいて「相場」を割り出す方法です。三つ目は、その会社の現在の収益性から逆算してその価値を割り出す方法です。実際にはこうしたやり方をいくつか組み合わせ、個別の事情を斟酌して会社の値段を決めていきます。

 しかし、 そうやって割り出した値段が妥当な金額であるとは限りません。せっかく買収した会社を活かせなければ意味がないからです。事例の場合、私は買収される会社と買収しようとする会社が提供する価値が異質である点が問題だと考えました。

 買収側の会社には異分野のマネジメントを行う力が乏しく、買収後にさまざまな追加コストが生じると思われました。例えば、28億円で購入した後に追加コストが10億円発生すれば、本体の経営基盤が脅かされるリスクが高まります。買収側の企業にそうしたリスクを負える覚悟はないと考え、「上限16億円」との意見を出させていただきました。

 買収対象の企業には中堅エンジニアが多数いる点は魅力でした。また、仮に会社を清算した場合、10億円近い現金が得られると見込まれたので「13億円以下ならリスクは低く、かなりお得」と判断しました。結局、この買収交渉は合意に至りませんでした。

 その後、ファンドから何度も再提案がなされたのですが、その都度提示価格は下がっていきました。当初、20億円以上で交渉していたのですが、再提案されるたびに、18億、16億、14億と提示価格が下がっていきました。買収側の企業の経営者は、不信を覚え、再提案には全く応じませんでした。当初から16億円と提示されていれば交渉は成立したような気がします。

 数年後、その会社が7億円で買収され、その後、解散・清算されたという話を聞きました。結局、その会社を本当に活かせる会社が現れず、安く買い叩かれて解体されたようでした。

 

 


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投稿者: 株式会社TMAコンサルティング

2022.11.15更新

              

  以前、国や地方公共団体などが大株主になっている東京中小企業投資育成株式会社から「社内不正防止セミナー」を依頼されたことがあります。私が内部統制に関する国際的なライセンス・公認内部監査人の資格を持っていたためです。

  担当者の方に「どうしてこのテーマを依頼したのですか?」とお尋ねしたところ、「社員数が 100 名を超えた企業では社内不正に悩んでいる場合が多いからです」とのことでした。社員が増えると経営者が社員の行動を把握できなくなってきます。また、企業規模の割には管理の仕組みが不十分な場合が多いため、社内不正が起きやすくなるのです。

  心理学者のクレッシーが提唱した「不正のトライアングル理論」という考え方があります。3つの条件が重なると不正が起きやすくなるというものです。3つの条件とは、①動機 ②機会 ③正当化 です。

  ①動機とは、金銭的な問題や欲求、仕事上の好成績へのプレッシャー、ミスや失敗を隠したいという気持ちなどです。中でも金銭的な動機が最も多いと言われています。

  ②機会とは、内部統制や社内監視が機能していない、もしくはこうしたものを無視できる立場にいるような場合のことです。とがめる人が誰もいなければ、出来心がわいてきやすいですし、不正行為も容易に行えてしまうのです。

  ③正当化とは、不正行為への心理的抵抗が少ない状況を指します。「このままでは会社が危機に陥る」と考えると、不正行為も仕方がないという気持ちになりがちです。「ちょっと借りるだけ。後で返せばよい」と考えると、目の前のお金を懐に入れることへの抵抗感も少なくなるでしょう。「他の人もやっている」、「経営者は悪い人だから懲らしめてやる」と考えると、不正行為が正しい行為に思えてきたりするのです。

  この3つの条件がそろうと不正行為が起きやすくなります。逆に言えば、この3つの条件が全部そろわなければ不正行為が起きにくいわけです。これが社内不正を防止するポイントになります。

  また、英国には状況的犯罪予防論という考え方があります。5つの状況を用意すれば不正は防げるというものです。その 5 つの状況とは、①物理的に実行しにくい状況、 ②すぐに見つかる状況、 ③やっても割に合わない状況、 ④その気にさせない状況、 ⑤言い訳(正当化)させない状況、の5つです。

  不正を行う人が一番悪いのですが、不正を起こしやすい状況、つまり、不正のトライアングルの3つの条件がそろうのを放置していたり、犯罪を予防する5つの状況を作り出すことを怠った企業の側にも大きな責任があります。

  企業管理のコンセプトとして“内部牽制組織”という考え方があります。役割、特に金銭に関する役割を分割して相互に監督し合う体制を作ることです。例えば、支払いを計算・承認する役割と実際に支払う役割を分離すること、現金を扱う役割と記録する役割を分離することなどによって相互に牽制させる仕組みがそれに当たります。

  小さな組織であれば比較的、個人の行動に目が届きますが、それなりの規模の組織では、役割を分割し、それぞれがけん制し合う仕組みにすることが大切になります。

 


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2022.10.01更新

               

 「正直者」という誉め言葉があります。「裏表のない人」という肯定的な意味で使われることが多い言葉です。しかし、「正直」であることはいつでも正しいわけではありません。状況次第では「正直」は悪いことになるかもしれないのです。

  「正直」に似た言葉に「誠実」があります。この二つは似ていますが、実は意味が違います。「正直」とはウソや偽りのない発言、振る舞い、そのような人物のことです。これに対し、「誠実」とは、自分自身の利得は後回しにして周囲の人や状況に対して最も良いと思われる言動をすること、そのような行動習慣を持つ人のことです。ですから、「正直」な人が「誠実」とは限りません。

  友達が悪人に追われて自分に助けを求めてきたとします。その友達を家にかくまっていたところ、悪人が訪ねてきて「おい!あいつの居場所をしっているだろう」と聞かれたとします。「正直」に答えるとしたらどうなるでしょう。「ええ、知っています。ウチにいますよ。」という答えになります。これだと友達は悪人にひどい目にあわされてしまいます。

  では、「遠い街に旅に出たといううわさを聞きました。」と答えたとします。そのおかげで友人は難を逃れることができました。もちろん、この発言はウソです。ですからこの人は「正直」ではありません。友人の状況をよく理解し、その友人にとって最も良い結果になるような言葉を選んだわけです。しかも、その発言のせいで自分自身が危険な目に合うかもしれません。しかし、この人は「誠実」な人と言えます。彼は「正直」ではなく、「誠実」な人なのです。

  医師が患者に対して、「あなたは重病ですね。この状況だとほとんど助かりませんね。」と話すのは「正直」ではあっても「誠実」ではありません。このように「正直」であることが正しくない場合はたくさん
あります。「正直」であるより「誠実」であることの方が大事なのです。

  哲学者のカントは「人は常に正直であるべきだ」と主張しました。実は友達をかくまう話はカントが用いたたとえ話です。カントはどんな場合であってもウソをついてはいけないと言っています。

  たとえ、相手が悪人であってもウソはいけないとカントは言います。そうすると、友達がひどい目にあわされてしまうかもしれません。カントは、ウソは許されないが、知っていることを必ずしもすべて話す必要はないと述べて倫理的な行動と正しい結果とのバランスを取ろうとしたのです。

  しかし、カントのように徹底的に「正直」であることにこだわると息が詰まるような気がします。“バカ正直”と呼ばれる人は「ウソはいけない」というカントのような考え方の人なのかもしれません。

  「正直」と「誠実」の使い分けに正解はありません。人生観や信念によって結論は変わってきます。「誠実」に行動したつもりでも、相手の受け取り方によっては「不誠実」に思われてしまうかもしれません。

  しかし、自分がどういう考え方をするかは意識しておくことは大切です。そうすれば、自分の基準や物の見方が適切かどうかを振り返ることができるからです。ことあるごとに自分の物の見方を振り返る習慣は「誠実」な行動のように思います。

 


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2022.09.01更新

             

 在庫は会計上問題になりやすいテーマです。適切な会計処理を行うためには在庫の特性を理解しておくことが大切です。在庫の問題には、数量の問題と金銭評価(金額)の問題があります。

  在庫の間違いを防ぐには定期的に「実地棚卸」を行うことが大切です。実地棚卸は横領などの社内不正の防止、会計処理の誤りを早期発見するためにも必要です。また、実地棚卸の実施状況はその会社の業務管理レベルを示すものでもあります。中小企業の中には、倉庫をざっと見た程度で推定した概算値で済ましている場合がありますが、少しずつでも実地棚卸のレベルを上げていく取り組みが必要です。

  数量の問題で見落としやすいのは「社外在庫」です。社外在庫とは購入済みの商品や材料が、まだ購入先に預けられていたり、運搬中だったりして自社に届けられていない状態を指します。会計上は仕入れの記録があるにもかかわらず、それが在庫に計上されていないと損益の計算に大きな狂いが生じます。

  社外在庫は、商品等が手元にないので、つい見落としがちです。社外在庫の見落としは、自社だけでは保管が難しい商材を扱っている企業に起こりがちです。特に会計知識の乏しい人が在庫管理を行う場合には注意する必要があります。

  以上のような数を正確に数えれば済む数量の問題とは異なり、在庫の金額を評価することはわかりにくさがあります。複数の“正しい”考え方があります。例えば、買った時の値段がバラバラな商品等が在庫となっている場合、どの値段を選ぶかで在庫の金額が変わってきます。買うタイミングによっては価格が二倍、三倍も違うものもあります。評価の問題は簡単ではありません。

  在庫の評価としては、一つ一つの商品の入出庫とその価格を対応させる方法(個別法)がわかりやすいでしょう。しかし、大量の商材を扱う場合には事務量が増えて大変です。そこで、先に仕入れたものから出庫する方法(先入先出法)、後から仕入れたものから出庫する方法(後入先出法)、最後に仕入れた時の価格を適用する方法(最終仕入原価法)などがあります。最終仕入原価法が一番簡略であるためよく使われています。

  他にも、仕入れた商品の平均をとる方法(総平均法、移動平均法、単純平均法)や売価と原価の比率を在庫に当てはめる方法(売価還元法)のように計算によって求める方法もあります。こうした評価方法のどれを選ぶかは自社の事業の特性や実体、管理レベルによっても違ってきます。

  在庫の評価で最も悩ましいのが「仕掛品」です。仕掛品には材料費だけではなく、人件費やその他の経費がかかっています。それらの金額のうちいくらを仕掛品に配賦するかは難しい問題です。採用した配布基準によって仕掛品の金額は大きく左右されるのです。

  配布基準には人数、期間、面積、使用したエネルギーなどさまざまなものがあります。部外者が見ても「なるほど」と納得してもらえるような妥当性のある基準を選ぶことが大切です。仕掛品の評価はその判断基準を巡って税務調査でも問題になりがちです。

  在庫を適切に評価しないと正しい業績が分かりません。不十分な在庫管理によって自社の業績を正しくつかめていない会社はたくさんあります。在庫管理の妥当性は定期的に見直していく必要があります。在庫の問題の正解は一つではありません。

 


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