ドラッカーは成果を上げるコツを一つだけ挙げるとすれば「それは集中である」と述べています。集中とは一つのことに意識を向けて取り組むことです。集中することで行動、取り組みのレベルが上がり成果が大きくなります。
集中のポイントは目的を一つに絞ることです。やるべきことを明確にし、そこに意識を向けることで集中力が高まります。大切なことは目的を意識的に選ぶということです。意識的に目的を設定することはモチベーションをあげる必要条件でもあります。
マルチタスク(複数の仕事を同時に並行して処理すること)は集中とは真逆の状態です。人間の意識は二つに分けることはできません。多くの仕事を同時にうまくこなしているように見える人も、実際には一つの仕事を手早く片付け、次の仕事に素早く取り掛かっているだけなのです。
意識的に目的を選んで取り組むと「よい集中」状態に入りやすくなります。これに対し、状況の圧力によって起きる集中は「悪い集中」です。たとえば、トラブルが起きた時などで発揮される集中力は典型的な「悪い集中」の状態です。
集中すると視野が狭くなります。焦点を絞った領域に意識を向けるわけですから、それ以外のことについては注意が散漫になるのです。すると、思わぬところから更なるトラブルが生じるのです。「よい集中」のためには、思わぬ事故が起きないよう十分に準備する必要があります。
「よい集中」のためには、日常的に仕事の目的を意識し十分に段取りを組むことが大切です。よく「仕事に追われる」といいますが、それは状況の流れに身を任せて起きた「悪い集中」の状態です。「今日はなんだか忙しかったけれど、何をしていたのかよく思い出せない」といった状態は「悪い集中」の状態なのです。こうした状態では大きな成果はなかなか得られません。
☆「集中」に関する P.F.ドラッカーの名言
1. 成果をあげる秘訣は集中。
2. 成果をあげる人は最も重要なことから始め、一度に一つのことしかしない。
3. 忙しさに身を任せるのではなく、成果をあげることに力を入れる。
4. ひとつに集中するほど実際にやれる仕事は多くなる。
5. 集中すると時間が少なくて済む。成果をあげない人ほど長時間働く。
6. 古いものを計画的に廃棄するが新しいことを進める唯一の方法。
7. 優先順位の決定はやさしい。難しいのは劣後順位の決定。
8. 状況に流されて優先順位を決めてはいけない。